トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-
裁判所を後にした俺たちは、そのまま事務所へ戻った

判決は全面勝訴

長かった戦いに一区切りがついた

それなのに誰も浮かれてはいなかった

嬉しくないわけじゃない

むしろ嬉しい

でもこの数か月で失ったものが大きすぎた

簡単に「よかった」で終われる話じゃなかった

会議室へ入るいつもの場所

長机、並ぶ椅子

社長と黒瀬さん

そして法務部の人たち

久しぶりに全員が揃っていた

誰もすぐには喋らない

静かな空気が流れる

その時だった

椅子に座っていた奏が立ち上がった

みんなの視線が集まる

奏は少し緊張したように唇を結ぶ

そして深く頭を下げた

「……本当に申し訳ありませんでした」

会議室が静まる

奏は顔を上げない

そのまま続けた

「今回の件……」

声が震えていた

「自分の甘さが原因でした」

俺は眉を寄せる

でも奏は続ける

「もっと気を付けていれば」

「もっと危機感を持っていれば」

「こんなことにはならなかったかもしれない」

拳を握り締める

「俺のせいで」

「黒騎士を止めてしまった」

「みんなの仕事も」

「スタッフさんたちの生活も」

「ファンのみんなも」

「全部巻き込んでしまった」

奏はもう一度頭を下げた

「本当にごめんなさい」

静かな会議室

誰も動かない

奏の肩だけが小さく震えていた

きっとずっと抱えていたんだろう

無実だと証明された今でも自分を責め続けている

そして

奏は顔を上げた

目は真っ赤だった

それでも真っ直ぐ前を見ていた

「だから……」

小さく息を吸う

そして

言った

「俺を…黒騎士に復帰させてください」

その言葉に会議室の空気が止まった

奏は深く頭を下げる

「もう一度」

「黒騎士として活動したいです」

「今度はちゃんと」

「胸を張って」

「みんなと同じステージに立ちたいです」

声が震える

それでも最後まで言い切った

「お願いします」

深く

深く頭を下げる

その姿を見た瞬間だった

「そんなの」

最初に口を開いたのは蒼依だった

奏が顔を上げる

蒼依は泣きそうな顔をしている

「誰が拒否すんだよ」

声が震えていた

「お前がいないと黒騎士じゃない」

会議室が静まる

蒼依は鼻をすすった

「席空けて待ってた意味分かってる?」

「歌番組も」

「ライブも」

「ずっと空けてたじゃん」

「今さら何言ってんの」

奏の目から涙が落ちる

優朔も静かに立ち上がった

そして奏の前へ行く

「奏」

短く言う

奏が顔を上げる

優朔は少しだけ笑った

「おかえり待ってたよ」

その言葉に奏の瞳が揺れた

俺も立ち上がる

そして奏の肩へ手を置いた

「四人の黒騎士が完成するって」

「社長言っただろ」

声が少し掠れる

「俺たちずっと待ってたんだよ」

「お前が帰ってくるの」

奏は何も言わずただ涙を流している
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