トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-
 ――そして、出発の朝

トップアイドルである彼の出発は当然のように早朝だった

駅のホームや空港はファンやマスコミで大騒ぎになるから

私は優朔のマンションの地下駐車場で見送る約束になっていた 

迎えのマネージャーさんの車が到着する数分前

大きなキャリーケースを傍らに置いた優朔は、いつも通りのバケットハットと黒縁メガネの変装姿で、私の前に立っていた

「……じゃあ、行ってくるね」

「うん体に気をつけてねご飯、ちゃんと食べるんだよ?」

だけど、遠くから車のエンジン音が近づいてくるのが聞こえた瞬間

胸の奥がきゅっと締め付けられた

笑顔が消えそうになる

そんな私の焦りを察したように、優朔が一歩、足を進めた

帽子の庇を少しだけ押し上げると、彼は私の腰を引き寄せ、正面から深く唇を重ねてきた

「ん……っ」

それは、昨夜の優しいものとは違う

どこか強引で、寂しさを堪えきれないような切ないキスだった 

私の唇を何度も深く貪り、離したくないという彼の強い意志が、その熱さからビリビリと伝わってくる

「ふは……っ、優朔……」

「……帰ってきたら、たくさんしようね」

息が切れて唇が離れた瞬間、優朔は私の耳元にそう囁いた

かすかに鼻にかかったその声はやっぱり少しだけ寂しそうで、愛おしくて

「うん…」

私が涙を堪えて小さく頷くと、優朔はメガネの奥の瞳をふにゃりと和ませ、私の頭をぽんぽんと叩いた

ちょうどそこへ、迎えの黒いミニバンが静かに滑り込んでくる


優朔は振り返り、一度だけ私に向かって手を振ると、車へと乗り込んでいった

静かに走り去っていく車のテールランプを見つめながら

私はまだ唇に残る彼の熱を確かめるようにそっと指先で触れた

いってらっしゃい、優朔大好きだよ

胸の奥でそう呟きながら

私は1ヶ月後に一回り大きくなって帰ってくる愛しい人を、笑顔で待ち続ける覚悟を決めていた
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