トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-
「先生と紗凪」

梓がモニターの数値を睨みながら呼ぶ

「うん」

「心嚢液の再貯留がないか、エコーでもう一度評価して」

「了解」

志田先生はすぐにポータブル超音波装置のプローブを手に取る。

そして画面を食い入るように見つめ、再評価を行った

モニターに映し出されたのは、心臓を外側から再び圧迫しつつある、じわじわと増え続ける心嚢内の血液だった

解離の進行は、一刻の猶予も許さない

「これ以上は持たない。
今すぐ緊急の人工血管置換術へ移行する!」

外科医が冷徹に判断を下す

「心血管外科、オペ室搬送準備!」

ER全体が、さらに激しい騒然とした熱気へと包まれていく

その時だった

私たちの流れるような連携を見ていた若手のレジデントが、驚嘆したように小さく呟いた。

「一ノ瀬さんの申し送り、情報の優先順位が明確で本当に分かりやすいな……」

隣にいた後輩看護師も、深く同意するように頷く

「過酷なフライトから帰ってきた直後なのに、声も視線も全然ブレないもんね。現場であれだけの超緊急処置をこなしてきた後なのに、本当にすごい」

それを耳にした梓が、誇らしげにふっと口元を緩めた

「当たり前でしょ」

不意に響いたその強い一言に、周囲のスタッフがハッとして振り返る

梓は手際よくカルテの入力を進めながら、誇らしげに言葉を続けた

「紗凪は、うちの救命センターの絶対的なエースなんだから」

何気ない、いつものぶっきらぼうな口調だった

けれどそこには、何年も一緒に地獄のような現場をくぐり抜けてきた親友としての、絶対的な信頼が宿っていた。 

私は思わず梓の顔を見る

ちょうど、彼女の視線と真っ直ぐに重なった

「なによ、見つめて」
「ううん、別に」
「さあ、この患者さん、絶対に死なせないよ」

親友のその揺るぎない言葉に、私の唇からも自然と強い笑みが零れ落ちた

「うん……!」

患者の血圧は、解離の進行とともに少しずつ、けれど確実に低下を始めていた

あちら側の世界へ引きずり込まれるまでの時間は、もう多くは残されていない

けれど、今のこの場所には、誰一人として下を向かない最高のチームがいる

大空のフライトで必死に繋ぎ止めた命のバトンを、今度は地上のERの戦友たちが全力で引き継ぐ

私は処置台の横で外科医のサポートへと回り、梓は患者の足元で輸血の管理を統括する

志田先生は手術室への最終ルートの確保に走る

誰一人として、諦める者なんていなかった

命を救うための私たちの戦いは、ここからさらに激しさを増して続いていく
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