トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-
紗凪side
静かだった
寝室の中には、規則正しい呼吸音だけが響いている
私はベッドの横に置かれた椅子へ腰掛けながら、そっと奏くんを見つめた
眠っている
ようやく
本当にようやく
張り詰めていた糸が切れたみたいに
力尽きたみたいに
深く眠っていた
でもその寝顔は見ていて苦しくなる
目元には涙の跡が残っている
少し赤くなった瞼
強く噛み締めたせいか、薄く傷ついた唇
無意識なのか、眉間にはまだ小さく皺が寄っていた
きっと眠っていても不安なのだろう
私は小さく息を吐いた
胸の奥が痛い
こんな奏くんを見たことがなかった
いつだって明るかったから
いつだって誰かを笑わせていたから
私が黒騎士のみんなと関わるようになってからも、奏くんは変わらなかった
「紗凪さん!」
そう言って笑顔で近付いてきて
「陽貴さんより俺の方が優しくないっすか?」
なんて冗談を言って
陽貴くんに怒られて
それでも楽しそうに笑っていた
誰かが落ち込んでいたら真っ先に空気を変える人
誰かが一人になっていたら自然に隣へ座る人
そんな人だった
だからこそ
さっきの姿が頭から離れない
泣きながら自分を責めて
壊れそうな声で
“誰か俺を殺してくれよ”
そう言った奏くん
思い出しただけで胸が締め付けられる
私は看護師だ
救命の現場で働いている
身体が壊れていく人も
心が壊れていく人も
たくさん見てきた
だから分かる
今の奏くんは危うい
自分が思っている以上にずっと
ずっと一人で抱え込んでいたのだろう
記事が出る前から
昨日から
いや
もしかしたらホテルへ行ったあの日からずっと
誰にも言えずに
苦しんでいたのかもしれない
私はそっと毛布を肩まで引き上げた
少しでも安心できるように
少しでも温かく眠れるように
すると眠ったままの奏くんが小さく眉を動かす
そして
掠れた声が漏れた
「……ごめん……」
私は思わず息を呑んだ
夢の中でも謝っている
どれだけ自分を責めているんだろう
私はゆっくり目を伏せた
そして小さな声で呟く
「大丈夫だから…ね…」
もちろん軽率だった部分はあったと思う
芸能人としては不用意だったのかもしれない
でも人を助けようとしたことまで否定されるべきじゃない
優しさを利用された人がどうしてここまで傷付かなきゃいけないんだろう
そんなことを考えてしまう
窓の外へ目を向ける
青空が広がっている
なのにリビングにいる陽貴くんたちのことを思うと、胸が重くなった
きっとみんな苦しい
陽貴くんも
優朔さんも
蒼依くんも
そして何より
奏くん自身が
私はもう一度奏くんを見る
静かな寝息
ようやく眠れた顔
だから今だけは
何も考えなくていい
何も背負わなくていい
そう思いながら
私はそっと椅子にもたれた
どうか少しでも
この時間だけは
穏やかな夢が見られますように、と願いながら
静かだった
寝室の中には、規則正しい呼吸音だけが響いている
私はベッドの横に置かれた椅子へ腰掛けながら、そっと奏くんを見つめた
眠っている
ようやく
本当にようやく
張り詰めていた糸が切れたみたいに
力尽きたみたいに
深く眠っていた
でもその寝顔は見ていて苦しくなる
目元には涙の跡が残っている
少し赤くなった瞼
強く噛み締めたせいか、薄く傷ついた唇
無意識なのか、眉間にはまだ小さく皺が寄っていた
きっと眠っていても不安なのだろう
私は小さく息を吐いた
胸の奥が痛い
こんな奏くんを見たことがなかった
いつだって明るかったから
いつだって誰かを笑わせていたから
私が黒騎士のみんなと関わるようになってからも、奏くんは変わらなかった
「紗凪さん!」
そう言って笑顔で近付いてきて
「陽貴さんより俺の方が優しくないっすか?」
なんて冗談を言って
陽貴くんに怒られて
それでも楽しそうに笑っていた
誰かが落ち込んでいたら真っ先に空気を変える人
誰かが一人になっていたら自然に隣へ座る人
そんな人だった
だからこそ
さっきの姿が頭から離れない
泣きながら自分を責めて
壊れそうな声で
“誰か俺を殺してくれよ”
そう言った奏くん
思い出しただけで胸が締め付けられる
私は看護師だ
救命の現場で働いている
身体が壊れていく人も
心が壊れていく人も
たくさん見てきた
だから分かる
今の奏くんは危うい
自分が思っている以上にずっと
ずっと一人で抱え込んでいたのだろう
記事が出る前から
昨日から
いや
もしかしたらホテルへ行ったあの日からずっと
誰にも言えずに
苦しんでいたのかもしれない
私はそっと毛布を肩まで引き上げた
少しでも安心できるように
少しでも温かく眠れるように
すると眠ったままの奏くんが小さく眉を動かす
そして
掠れた声が漏れた
「……ごめん……」
私は思わず息を呑んだ
夢の中でも謝っている
どれだけ自分を責めているんだろう
私はゆっくり目を伏せた
そして小さな声で呟く
「大丈夫だから…ね…」
もちろん軽率だった部分はあったと思う
芸能人としては不用意だったのかもしれない
でも人を助けようとしたことまで否定されるべきじゃない
優しさを利用された人がどうしてここまで傷付かなきゃいけないんだろう
そんなことを考えてしまう
窓の外へ目を向ける
青空が広がっている
なのにリビングにいる陽貴くんたちのことを思うと、胸が重くなった
きっとみんな苦しい
陽貴くんも
優朔さんも
蒼依くんも
そして何より
奏くん自身が
私はもう一度奏くんを見る
静かな寝息
ようやく眠れた顔
だから今だけは
何も考えなくていい
何も背負わなくていい
そう思いながら
私はそっと椅子にもたれた
どうか少しでも
この時間だけは
穏やかな夢が見られますように、と願いながら