トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-
陽貴side
夜20時
リビングには静かな時間が流れていた
流れているのはエアコンの微かな音だけ
あれから奏はずっと眠り続けている
途中何度か様子を見に行ったけど、目を覚ます気配はない
熱は少しずつ下がってきているらしい
でも身体が限界まで疲れているのだろう
今は眠ることしかできない
俺はソファに深く腰掛けながらスマホを見つめた
1時間ほど前
黒瀬さんから電話があった
内容は簡潔だった
『今後1週間のスケジュール、全部白紙になった』
その言葉を聞いた瞬間
胸の奥が重く沈んだ
覚悟はしていた
むしろ当然だとも思った
スポンサー対応
テレビ局との協議
企業との調整
世間の反応
どれを取っても、このまま通常通り活動できるはずがない
頭では分かっていた
それでも
実際に言葉として聞くと重い
黒騎士は走り続けてきた
何年も
休む暇もなく
それが突然止まる
その意味を俺たちは誰より理解していた
俺はゆっくり目を閉じる
そして思う
……奏になんて言うかな
目を覚ました時
あいつはきっと自分を責める
全部自分のせいだと
仕事が飛んだことも
スポンサーも
ファンも
全部
自分が壊したと思うだろう
だからこそ何を言えばいいのか分からなかった
正解なんてない
俺自身だって整理できていない
そんなことを考えていた時だった
「みんな」
優しい声
顔を上げる
そこには紗凪が立っていた
トレーを持っている
「これ」
テーブルへ置かれた皿
そこには小さなサンドイッチが並んでいた
「食べれそうだったら食べてください」
ふわりと笑う
卵
ハム
ツナ
一口サイズに切られている
疲れていても食べやすいように
きっと考えて作ったのだろう
俺は思わず苦笑した
「助かる」
本心だった
今日誰もまともに食事をしていない
俺も
優朔も
蒼依も
奏のことで頭がいっぱいで、空腹すら忘れていた
でも身体は正直だ
ふとサンドイッチを見ると急に空腹を思い出した
「みんなも食べて」
紗凪が言う
優朔が少し困ったように笑う
「食欲ないな」
「少しでも食べてください」
紗凪らしい
優しくて
でもこういう時だけ妙に強い
「これ以上誰も倒れちゃだめです」
まっすぐなその一言に
全員が静かに頷いた
確かにそうだ
『俺のせいでみんなが苦労してる』
って
奏なら絶対言う
その姿が容易に想像できてしまう
俺はサンドイッチを一つ手に取る
口へ運ぶ
……うまい
びっくりするくらい
優しい味だった
今日初めてまともに食べた気がする
「美味しい?」
紗凪が聞く
俺は頷いた
「うん、すごく美味しい」
すると紗凪が少し嬉しそうに笑った
その顔を見ていると張り詰めていた心が少しだけ緩む
「僕たちも頂くね」
「はい、どうぞ」
そう言って優朔と蒼依もサンドイッチを食べ始める
「…うま…」
蒼依が思わず声を漏らす
不思議だ
何も解決していない
状況は最悪だ
でも温かいご飯があって
仲間がいて
紗凪がいてくれる
それだけで少しだけ前を向ける
俺はコーヒーを一口飲んだ
そしてふと寝室の方を見る
閉じられたドア
その向こうで眠る奏
早く目を覚ませよ
そう思った
目を覚まして
またくだらないこと言って
いつものように笑ってくれ
俺たちの前で
何事もなかったみたいに
そんな願いを抱きながら
俺は静かにサンドイッチを口へ運んだ
夜20時
リビングには静かな時間が流れていた
流れているのはエアコンの微かな音だけ
あれから奏はずっと眠り続けている
途中何度か様子を見に行ったけど、目を覚ます気配はない
熱は少しずつ下がってきているらしい
でも身体が限界まで疲れているのだろう
今は眠ることしかできない
俺はソファに深く腰掛けながらスマホを見つめた
1時間ほど前
黒瀬さんから電話があった
内容は簡潔だった
『今後1週間のスケジュール、全部白紙になった』
その言葉を聞いた瞬間
胸の奥が重く沈んだ
覚悟はしていた
むしろ当然だとも思った
スポンサー対応
テレビ局との協議
企業との調整
世間の反応
どれを取っても、このまま通常通り活動できるはずがない
頭では分かっていた
それでも
実際に言葉として聞くと重い
黒騎士は走り続けてきた
何年も
休む暇もなく
それが突然止まる
その意味を俺たちは誰より理解していた
俺はゆっくり目を閉じる
そして思う
……奏になんて言うかな
目を覚ました時
あいつはきっと自分を責める
全部自分のせいだと
仕事が飛んだことも
スポンサーも
ファンも
全部
自分が壊したと思うだろう
だからこそ何を言えばいいのか分からなかった
正解なんてない
俺自身だって整理できていない
そんなことを考えていた時だった
「みんな」
優しい声
顔を上げる
そこには紗凪が立っていた
トレーを持っている
「これ」
テーブルへ置かれた皿
そこには小さなサンドイッチが並んでいた
「食べれそうだったら食べてください」
ふわりと笑う
卵
ハム
ツナ
一口サイズに切られている
疲れていても食べやすいように
きっと考えて作ったのだろう
俺は思わず苦笑した
「助かる」
本心だった
今日誰もまともに食事をしていない
俺も
優朔も
蒼依も
奏のことで頭がいっぱいで、空腹すら忘れていた
でも身体は正直だ
ふとサンドイッチを見ると急に空腹を思い出した
「みんなも食べて」
紗凪が言う
優朔が少し困ったように笑う
「食欲ないな」
「少しでも食べてください」
紗凪らしい
優しくて
でもこういう時だけ妙に強い
「これ以上誰も倒れちゃだめです」
まっすぐなその一言に
全員が静かに頷いた
確かにそうだ
『俺のせいでみんなが苦労してる』
って
奏なら絶対言う
その姿が容易に想像できてしまう
俺はサンドイッチを一つ手に取る
口へ運ぶ
……うまい
びっくりするくらい
優しい味だった
今日初めてまともに食べた気がする
「美味しい?」
紗凪が聞く
俺は頷いた
「うん、すごく美味しい」
すると紗凪が少し嬉しそうに笑った
その顔を見ていると張り詰めていた心が少しだけ緩む
「僕たちも頂くね」
「はい、どうぞ」
そう言って優朔と蒼依もサンドイッチを食べ始める
「…うま…」
蒼依が思わず声を漏らす
不思議だ
何も解決していない
状況は最悪だ
でも温かいご飯があって
仲間がいて
紗凪がいてくれる
それだけで少しだけ前を向ける
俺はコーヒーを一口飲んだ
そしてふと寝室の方を見る
閉じられたドア
その向こうで眠る奏
早く目を覚ませよ
そう思った
目を覚まして
またくだらないこと言って
いつものように笑ってくれ
俺たちの前で
何事もなかったみたいに
そんな願いを抱きながら
俺は静かにサンドイッチを口へ運んだ