お酒のせいにできない
「福原くん、ハンカチ、ありがとう。ちゃんと洗って返すから」

「いいよ、あげるよ」

「いや、でも、そんな、貰うわけには……」

「いらなかったら捨てていいから──」

「ねえ、そこの二人、さっきからいちゃいちゃしてない?」

 心臓が跳ねるほどの大声に割り込まれ、結菜はハッと顔を向けた。こちらを見ている幼馴染と視線が合わさった。ゆるりと瞳を巡らすと、多くの目が結菜と遼に向いていた。何を勘違いしているのか、にやにやと明らかに揶揄を含んだ表情を浮かべている人までいる。

 全員気心の知れた幼馴染とはいえ、目立つのが苦手な結菜はたじろぎ、肩を狭めて小さくなってしまった。遼の名誉のためにも、いちゃいちゃなどしていないとはっきり否定しなければならないのに、喉が締まって上手く言葉が出てこない。場を盛り上げるための冗談に決まっているのだから、本気にならずに笑って受け流せば済む話なのに。

「いちゃいちゃはしてないよ。久しぶりだね、って話してただけ」

「いや、俺は見たからな、福原が橘の口をハンカチで塞いだ瞬間を」

「え、まさか二人、できてるの? そういう関係? いつの間に?」

「一から順に詳しく聞かせて」

「幻覚を見るほど飲むのはよくないよ」

 赤面して縮こまる結菜と違い、嘘を含んだ雑な対応で流す遼は、言うだけ言って興味を失くしたみたいに口を閉ざした。幼馴染たちは遼の言葉に親しみのある物言いで反論し、食い下がっていたが、注文していた品が運ばれてきたのを機に話題は流れた。二人を巻き込んだ軽い戯れの時間に過ぎなかった。真面目に受け取り恥ずかしくなっていたのは結菜だけ。
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