お別れしたはずなのに、トラウマCEOの淫らな求愛にカラダから蕩かされています⁉︎
 重たい空気を払拭しようとするみたいに穏やかに微笑んでいるけれど、やはりその目はどこか鋭くて逃がしてくれる気はなさそうだ。

 そして、リビングの扉を開けた瞬間、さらに強くそれを実感した。

 リビングの中央に置かれたダイニングテーブルには、すでに白いクロスが掛けられ、ディナーの準備が整えられていた。
 向かい合うように用意された二席には、磨き上げられたカトラリーと、薄いクリスタルのグラスが静かに光を受けて並んでいる。
 それぞれの席の前には、銀のドームがかかった皿がひとつずつ。まだ開けられていないその下からは、かすかに温かなお肉のような香ばしい香りが漂ってくる。

 ……よ、用意周到すぎる。

 部屋を取っていたというから、私をロビーで待っている間に手配してくれたのだろうが……すでに整ったインルームのコース料理に目を剥くことしかできない。

 心で唖然とすると同時に、昼休みに里子の言葉を思い返す。


『向こうが〝別れを望んでいた〟っていうのは、違う気がするけどなー』


 こんなにも囲い込まれてしまうと、里子の言うことが信憑性を増してしまう。
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