夜風にさらわれたお姫様
牙戦以降、夜坂街は少し落ち着きを取り戻していた。
もちろん完全な平和ではない。
でも少なくとも今は、こうして笑える時間がある。
榴愛はその光景を見ながら、小さく笑った。
最初は怖かった。
裏社会なんて関わりたくなかった。
でも今は違う。
ここが、大切な場所になっていた。
その時。
ぐい。
「きゃっ」
突然、煌夜に引き寄せられる。
「煌夜!?」
「隣」
「今座ってたよね!?」
「足りねぇ」
意味が分からない。
しかし煌夜は当然のように榴愛を膝へ乗せた。
広間がざわつく。
「うわ出た」
「若頭の独占欲」
「姫ちゃん慣れてきてるの怖いっす」
「慣れてません!!」
榴愛は真っ赤になる。
煌夜はそんな榴愛を見て少し笑った。
「今日も可愛い」
「っ……!」
もう最近は毎日のように言われる。
それでも慣れない。
依吹がコーヒーを飲みながら呟く。
「平和ですねぇ」
「嵐の前かもしれねぇけどな」
駿が腕を組む。
空気が少しだけ変わった。
新しい組織。
煌夜が誕生日の日に聞いた話。
まだ詳細は掴めていない。
でも確実に、“何か”が動いている。