夜風にさらわれたお姫様

屋敷へ戻る車の中。


榴愛は窓の外を見ていた。

夜坂街のネオンが流れていく。

「……」

今日だけで何回心臓爆発しかけたんだろう。

煌夜は隣でスマホを見ている。

真剣な横顔。

綺麗だな、と思ってしまった瞬間。


「見すぎ」

「っ!?」

榴愛は飛び上がった。

煌夜がこちらを見ている。

「な、何も見てません!」

「嘘下手」

「うぅ……」

絶対遊ばれてる。


煌夜は少し笑うと、突然榴愛の頬を指でつついた。

「ひゃっ」

「柔らけ」

「さ、触らないでください!」

「嫌」

「子供!?」


車内に透の小さな笑い声が響く。

「煌夜さん、楽しそうですね」

「まぁな」

「珍しいです」

榴愛はさらに顔が熱くなった。

なんでこんなに振り回されてるんだろう。


屋敷へ戻ると、広間では組員たちが集まっていた。

「おかえりー」

「デートどうだった?」

「襲撃された」

煌夜が即答すると、空気が変わる。

依吹が眼鏡を押し上げた。

「黒崎組ですか」

「あぁ」

「榴愛さんの顔、完全に覚えられましたね」

榴愛は肩を縮こませる。


すると。

ぽん。

煌夜が榴愛の頭に手を置いた。

「怯えんな」

「……」

「ここにいる限り手出しさせねぇ」

その言葉に、広間の空気が少し和らぐ。


蒼空が明るく笑った。

「姫ちゃん大丈夫っすよ! 白鴉組めちゃ強いんで!」

姫ちゃん?
私の苗字が姫野だから?

「自分で言うな」

「事実じゃないっすか」

「まぁ事実だな」

駿まで頷く。

榴愛は少しだけ笑った。

この人たち、本当に家族みたい。


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