夜風にさらわれたお姫様
その時。
「榴愛ー!」
心桜が駆け寄ってきた。
「買い物どうだった!?」
「……色々大変だった」
「顔赤いけど?」
「っ」
「何されたの煌夜に?」
「何もしてねぇ」
煌夜が即答する。
しかし心桜はニヤニヤしていた。
「へぇ〜?」
「みお!!」
「かわいー」
榴愛は顔を覆った。
絶対弄ばれてる。
夜。
お風呂を終えた榴愛は、自室へ戻っていた。
広い部屋。
静かな空気。
ベッドへ座り、今日のことを思い出す。
壁ドンみたいになったこと。
手を繋いだこと。
「可愛い」って言われたこと。
「うぅぅ……」
恥ずかしすぎる。
顔を埋めて転がる。
その時。
コンコン。
「……はい?」
障子が開く。
そこに立っていたのは煌夜だった。
「っ!?」
榴愛は飛び起きた。
「こ、煌夜さん!?」
「入るぞ」
普通に入ってきた。
「な、なんですか!?」
「怪我確認」
「え?」
煌夜は榴愛の前へ座る。
「昼、どっかぶつけただろ」
そういえば走った時に少し擦った気がする。
煌夜は榴愛の手首をそっと掴んだ。
「……赤くなってる」
「これくらい平気です」
「平気じゃねぇ」
そう言って救急セットを取り出す。
「え」
「透に借りた」
「わざわざ……?」
煌夜は無言で消毒液を塗った。
「っ、しみるかも……!」
「我慢」
「うぅ……」
なんだか子供扱いされてる気分。
でも。
その手付きは優しかった。
煌夜は真剣な顔で絆創膏を貼る。
その横顔を見て、榴愛は思う。
怖い人だと思ってた。
冷たい人だと思ってた。
なのに。
どうしてこんなに優しいんだろう。
「……煌夜さん」
「ん」
「なんでそこまでしてくれるんですか」
ぴたり、と手が止まった。
数秒の沈黙。
煌夜は榴愛を見つめる。
真っ直ぐな目。
「気に入ったから」
「……え?」
「お前」
心臓が跳ねた。
「……そ、それって」
「そのままの意味」
煌夜は平然と言う。
榴愛の顔が一気に熱くなった。
「からかわないでください……!」
「からかってねぇ」
「絶対嘘です!」
「じゃあ証明するか?」
「へ?」