夜風にさらわれたお姫様
夜の街。
ネオンの光。
遠くで響くバイク音。
氿時の鐘を過ぎた夜坂街は、やはり危険だった。
その時。
「……いた」
低い声。
煌夜が立ち止まる。
榴愛も足を止めた。
前方。
黒服の男たち。
ゆっくりこちらを見ている。
黒崎組。
空気が張り詰める。
男たちの一人が笑った。
「白城煌夜」
煌夜の目が冷える。
「……何の用だ」
「その女、随分大事みてぇだな」
榴愛は思わず煌夜の服を掴んだ。
煌夜はそれに気付き、少しだけ榴愛を庇う位置へ立つ。
「触んなよ」
低い声。
殺気が滲む。
男たちは笑っている。
「月夜の牙戦、始まるぜ」
その言葉と共に、空気がさらに重くなった。
夜風が吹く。
まるで嵐の前触れみたいに。
そして榴愛は気付いてしまう。
楽しい時間だけでは終われない。
自分たちはもう、“裏の世界”の中心にいるのだと。