夜風にさらわれたお姫様
すると。
ふわり、と夜風が吹いた。
榴愛の髪が揺れる。
煌夜がその髪へ触れた。
優しく指に絡める。
「……煌夜」
「好きだな」
「っ……!」
唐突すぎる。
煌夜は榴愛の腰を引き寄せる。
「お前」
近い。
夜景より煌夜の顔しか見えない。
「ん……」
軽くキスされる。
優しい。
でも甘い。
榴愛は顔を真っ赤にした。
「外……!」
「誰も見てねぇ」
「見てるって絶対!」
煌夜は楽しそうだった。
その時。
ピリリリリ。
煌夜のスマホが鳴る。
空気が変わる。
「……あぁ」
低い声。
榴愛は嫌な予感がした。
数秒後。
煌夜がスマホを切る。
「どうしたの?」
「……黒崎組」
やっぱり。
「近くで動いてるらしい」
榴愛の背筋が冷える。
煌夜は榴愛の手を握った。
「帰るぞ」
「……うん」
展望台を降りる。
さっきまで楽しかった空気が少しずつ緊張へ変わる。