夜風にさらわれたお姫様

夜。


榴愛は屋敷の屋上へ来ていた。

夜風が気持ちいい。

ネオンが遠くに見える。


すると。

「ここか」

煌夜が隣へ来る。

「……隣いい?」

「聞く必要ある?」

「ある」

榴愛は少し笑った。

「いいよ」

煌夜が隣へ座る。


静かな時間。


夜風が二人の髪を揺らす。

「……榴愛」

「はい?」

「昨日、本当に嬉しかった」

真っ直ぐな声。

榴愛の胸が熱くなる。

「……恥ずかしかった」

「知ってる」

「なら止めてよ……」

煌夜が笑う。

「無理」


そして。

そっと榴愛の肩を抱き寄せた。

「これから先」

低い声が夜に溶ける。

「危ないこと増えると思う」

榴愛は黙って聞く。

「でも絶対守る」

その言葉に嘘はない。

榴愛は煌夜の服を掴んだ。

「……私も」

「ん?」

「煌夜の隣にいたい」

煌夜が少し目を見開く。

その後、優しく笑った。


「ほんと、俺の理性壊しにくる」

「へ?」

「可愛すぎ」

「っ……!」

榴愛が赤くなると、煌夜は額へ軽くキスを落とした。


遠くでバイク音が響く。

夜坂街は静かに荒れ始めている。


それでも。

二人は今だけ、この温かな時間を大切に抱き締めていた。
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