夜風にさらわれたお姫様

朝。

白鴉組本部邸。


広間には重い空気が流れていた。

「黒崎組の動きが活発すぎる」

依吹がモニターを見ながら言う。

「ここ一週間で小競り合いが七件」

駿が舌打ちした。

「完全に牙戦前だな」

煌夜はソファへ座りながら静かに目を閉じていた。

その横顔は冷たい。

いつもの“恋人の顔”ではなく、“若頭の顔”。

榴愛は少し胸が苦しくなる。


すると。

「榴愛」

「っ、はい」

煌夜がこちらを見る。

その瞬間だけ、目が柔らかくなった。

「朝飯食ったか」

「……食べたよ」

「ならいい」

そのやり取りだけで、少し安心する。

心桜が小声で笑った。

「ほんと榴愛には甘い」

「聞こえてる」

「わざと」

広間に少しだけ笑いが戻る。


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