夜風にさらわれたお姫様
しかし。
その後ろ。
見慣れない男が立っていた。
黒髪。
鋭い目。
冷たい雰囲気。
榴愛は思わず煌夜の後ろへ隠れる。
すると男が笑った。
「へぇ」
低い声。
「それが白城煌夜の女か」
空気が凍る。
煌夜の目が冷たくなった。
「竜人」
榴愛の心臓が跳ねる。
――黒崎竜人。
黒崎組若頭。
男はゆっくり榴愛を見る。
まるで値踏みするみたいに。
「普通の女だな」
「見んな」
煌夜の声が低い。
殺気すら混ざっていた。
竜人は少し笑う。
「随分大事らしい」
「用件は終わっただろ」
「そう怖い顔すんな」
竜人は肩をすくめる。
「今日は挨拶だ」
「……」
「牙戦始まったら、本気で奪いに行く」
榴愛の背筋が凍った。
煌夜の空気が一変する。
「やってみろ」
低い。
恐ろしいほど。
竜人はそんな煌夜を見て笑った。
「面白ぇ」
そのまま踵を返す。