夜風にさらわれたお姫様
夜。
榴愛は部屋の窓から夜坂街を見下ろしていた。
遠くでバイク音が響く。
ネオンが滲む。
その時。
後ろから抱き締められた。
「っ」
煌夜。
「……寝れねぇの」
「少しだけ」
煌夜は榴愛の肩へ額を乗せる。
「竜人のこと考えてた?」
「……うん」
「気にすんな」
「でも」
「俺が守る」
何度も聞いた言葉。
でも、その度に救われる。
煌夜は榴愛の耳元で囁く。
「誰にも渡さねぇ」
その声は独占欲で満ちていた。
榴愛は少しだけ振り返る。
近い。
煌夜の目が真っ直ぐこちらを見ている。
「……榴愛」
「なに?」
「好き」
甘い声。
榴愛の胸が熱くなる。
「……私も」
その瞬間。
煌夜が深くキスをした。
優しく。
でもどこか焦るように。
まるで、本当に奪われる前に確かめるみたいに。
夜風が静かに窓を揺らす。
そして夜坂街では――。
月夜の牙戦が、確実に始まろうとしていた。