夜風にさらわれたお姫様
「……榴愛?」
屋敷へ戻った煌夜は異変に気付いた。
広間が静かすぎる。
そして。
心桜が息を切らして屋敷へ帰ってきた。
「煌夜……!」
その瞬間、煌夜の表情が変わる。
「……どこだ」
低い声。
心桜は悔しそうに唇を噛む。
「……黒崎組」
空気が凍った。
「攫われた」
数秒。
沈黙。
そして。
「……は?」
その声は静かだった。
静かすぎて、逆に恐ろしい。
煌夜の目から感情が消える。
駿が慌てて立ち上がる。
「煌夜」
「どこだ」
「まだ特定できてねぇ」
「探せ」
低い声。
でもその中には怒りが渦巻いていた。
依吹がすぐPC室へ向かう。
「心桜、監視映像」
「もうやってる!」
広間の空気が一気に戦場になる。
煌夜は拳を握り締めていた。
血が滲むほど強く。
「……俺の」
ぽつり、と呟く。
「榴愛に触れやがって」
その瞬間。
バキッ!!
机に亀裂が入った。
蒼空が息を呑む。
誰も止められない。
今の煌夜は危険だった。