夜風にさらわれたお姫様
黒崎組本部ビル前。
白鴉組の車が並ぶ。
組員たちの空気は張り詰めていた。
「正面突破っすか」
蒼空が緊張した声で言う。
駿は腕を組みながら笑った。
「派手でいいだろ」
依吹は静かにモニターを確認する。
「裏口は封鎖済み。ですが警備人数が多い」
「問題ねぇ」
煌夜の声は低かった。
その目には迷いがない。
いや。
正確には――榴愛以外見えていない。
「煌夜」
依吹が真面目な顔で言う。
「冷静に」
「分かってる」
そう答えた声は、全然冷静じゃなかった。
依吹は小さく息を吐く。
「……絶対一人で突っ込まないでくださいよ」
「善処する」
信用できない。
全員そう思った。