夜風にさらわれたお姫様
その時。
煌夜がポケットから小さな箱を取り出した。
「……え?」
榴愛が固まる。
煌夜は少しだけ視線を逸らした。
珍しく照れている。
「誕生日プレゼント」
「……っ」
榴愛はゆっくり箱を受け取る。
開ける。
そこには。
シルバーのネックレス。
その先には、小さな指輪がついていた。
「……綺麗」
思わず息を呑む。
煌夜が静かに言った。
「指輪はもう少し先だからな」
「っ……」
「でも、意味は同じ」
榴愛の胸が熱くなる。
煌夜はネックレスを手に取る。
「つける」
「……うん」
髪をそっと避けられる。
冷たいチェーンが首へ触れた。
心臓がうるさい。
煌夜の指先が優しく首元を撫でる。
「似合う」
低い声。
榴愛はネックレスへ触れた。
嬉しい。
すごく。
「……ありがとう」
「ん」
煌夜は榴愛の頬へ触れる。
「榴愛」
「なに?」
「ずっと隣いろ」
真っ直ぐな目。
その言葉はまるで誓いみたいだった。
榴愛は少し涙ぐみながら笑う。
「……うん」
その瞬間。
煌夜が優しくキスをした。
夜風が吹く。
ネオンが揺れる。
甘いキス。
榴愛は煌夜の服を掴んだ。
「……好き」
煌夜が囁く。
「誰より」
榴愛の胸がいっぱいになる。
「私も……好きだよ」
煌夜は少し笑った。
そのまま榴愛を抱き寄せる。
強く。
でも優しく。
「……誕生日、無事迎えられてよかった」
ぽつり、と煌夜が呟いた。
榴愛は少し驚く。
「……心配してたの?」
「当たり前」
煌夜は夜景を見ながら言う。
「この世界、いつ何あるか分かんねぇ」
その声は静かだった。
榴愛はそっと煌夜の手を握る。
「でも」
「?」
「今、幸せだよ」
煌夜の目が少し細くなる。
榴愛は笑った。
「怖いこともいっぱいあるけど」
「……」
「煌夜といる時間、大好きだから」
静かな沈黙。