私が拾ったのは、千年前の皇子様でした
美緒の講座は思ったよりも役に立ったようで、
悠真は一人、言葉遣いや仕草の復習をしている。

そんな姿を眺めながら、私は美緒と話をしていた。

「本当に古代人なんだね」

「私も最初は信じられなかったけど、言動も行動も明らかに普通じゃなかったからね」

「にしてもイケメン」

美緒は腕を組みながら頷く。

「これは持ち帰るわ」

「やめてよ」

思わず笑ってしまう。

「というか、本当に何もないわけ?」

「何もって?」

「ほら、キスしたり、一緒に寝たりとか」

「ぶっ!」

飲んでいたお茶を思い切り吹き出してしまった。

「きったな!」

「美緒が変なこと言うから!」

「その反応……何かありましたね?」

「何もないって!」

「ふ〜ん」

美緒は面白そうに笑いながら、
今度は悠真の方へ目を向けた。

「いい人だね」

「うん」

自然と頷いていた。

「でもさ」

美緒は少しだけ真面目な表情になる。

「こういう話って、最後は元の世界へ帰らなきゃいけない、みたいな展開が多いよね」

その言葉に、胸がぎゅっと締め付けられる。

悠真が、元の時代へ帰る。

そんなこと、考えたくもなかった。

でも。

このまま現代で暮らせる保証なんてない。

戸籍もない。

仕事もない。

いつか別れの日が来るのかもしれない。

そう思うだけで苦しくなった。

「……千紘」

美緒が優しく声をかける。

「深く考えすぎ」

「え?」

「未来なんて、誰にもわかんないんだから」

美緒は笑って続けた。

「もっと単純に考えればいいんだよ。この先、自分はどうしたいのか。悠真さんと、どうなりたいのか。」

その言葉が、静かに胸へ落ちていく。

私は今まで、
悠真がどう思っているのかばかり気にしていた。

でも。

私は、どうしたいんだろう。

悠真にとって、私はどんな存在なんだろう。
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