私が拾ったのは、千年前の皇子様でした
第8章 ゆかりの地

第24話 千紘、帰省する

悠真の作った昼ご飯を食べながら、
私たちは帰省について話していた。

「おお! 千紘の家族に会えるのか!」

悠真は目を輝かせる。

その嬉しそうな様子とは裏腹に、
私の心は不安でいっぱいだった。

「悠真は行きたい?」

「ああ、もちろんだとも!」

即答だった。

「それなら、一つ約束してほしいことがあるんだけど」

「もちろんだ!」

だから早いって。

「悠真には、私の彼氏のふりをしてもらいます」

「彼氏とは何だ?」

「……そこから?」

私は頭を抱えた。

「彼氏っていうのは……その、恋人っていうか」

「恋人とは何をするのだ?」

「っ……」

もう私の手には負えない。

私はスマホを取り出し、美緒へ電話をかけた。

三十分後。

「さぁ始まりました!」

美緒はどこから持ってきたのか、
指し棒を片手に、大きな紙の前へ立つ。

「美緒先生の! 彼氏育成講座〜!」

「いぇーい!」

……いや、いぇーいじゃない。

「てかさ」

美緒は悠真をじっと見つめる。

「めっちゃイケメンじゃん」

「だから言ったでしょ」

「このままGETしちゃいなよ」

「だから、そういう話じゃないって」

私たちのやり取りを聞きながら、
悠真は首をかしげている。

「まぁ、気を取り直して」

美緒は大きな紙を広げた。

そこには大きく、

彼氏として生き残るための五か条

と書かれていた。

① 「我」は禁止。「俺」か「僕」を使う。

② 歴史の話は禁止。

③ 千紘の家族には敬語。

④ 「〜である」「〜なのだ」禁止。

⑤ 皇子オーラを消す。

「皇子オーラってなんだ?」

悠真が真顔で聞く。

「それ!」

美緒は勢いよく指を差した。

「その堂々とした感じ!」

「む……」

「普通のサラリーマンはもっと猫背!」

「こうか?」

悠真が急に背中を丸める。

「違う違う!」

「じゃあ、こうか?」

今度はぎこちなく肩をすぼめる。

「不審者になってる!」

私は思わず吹き出してしまった。

「笑い事じゃないよ!」

美緒は頭を抱える。

「このままじゃ、お母さんに一発で『この人普通じゃない』ってバレる!」

私は改めて紙を見る。

数日で本当に覚えられるのだろうか。

いや、それ以前に。

何事もなく年末を迎えられるのだろうか。

そんな不安だけが、
どんどん大きくなっていった。
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