私が拾ったのは、千年前の皇子様でした
松山観光を終えた私たちは、
実家のある姫原へ向かうバスに乗っていた。

悠真は疲れてしまったのか、
窓にもたれながら、今にも眠ってしまいそうだ。

まぁ、あれだけ松山城や道後温泉ではしゃいでいたのだから、無理もない。

そんな寝顔を見ていると、
なんだか愛おしく思えてしまう。

「次は〜姫原〜姫原〜」

運転手さんのアナウンスが車内に響く。

「悠真、着いたよ」

私は肩を軽く叩いて起こした。

「……もう着いたのか」

目をこすりながら立ち上がる悠真が、
少し子どもっぽく見えて、思わず笑ってしまう。

バスを降りると、
ひんやりとした冬の空気が頬を撫でた。

見慣れた住宅街。

子どもの頃、毎日のように歩いた道。

「あぁ……」

自然と笑みがこぼれる。

「全然変わってないや」

懐かしい景色を見つめながら、
私はゆっくりと歩き始めた。

「ここが千紘の育った町なのだな」

悠真は周囲を見渡しながら、静かに呟く。

「うん」

久しぶりに帰ってきた故郷。

懐かしいはずなのに、
これから家族に悠真を紹介すると思うと、
胸が少しだけそわそわした。

「よし、行こう」

私はそう言って、
悠真と並んで実家への道を歩き始めた。
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