私が拾ったのは、千年前の皇子様でした
最終章 千紘と悠真
第29話 喪失感
去年の大晦日、実家へ帰った日のこと。
なぜか私は、一ノ瀬部長と一緒に『軽之神社』で倒れていたらしい。
記憶は曖昧だった。
でも、目を覚ました私は部長に向かって、
「恋人のふりをしてください!」
と、半ば強引にお願いした。
部長は驚きながらも、意外なほどあっさり了承してくれた。
そのまま二人で実家へ向かうと、家族は部長をすっかり気に入ってしまい、結婚の話まで持ち出す始末だった。
そうして私たちは、お正月を実家で過ごし、東京へ戻ってきた。
家へ帰った時、何かが足りないような気がした。
胸の奥にぽっかり穴が空いたような、そんな違和感。
でも、その正体はわからない。
気のせいだろう。
私はそう思うことにした。
ピピピピーッ。
目覚まし時計が鳴る。
「会社行きたくねぇよぉ……」
小さくぼやきながらアラームを止め、いつものように着替えを始める。
寝室を出て、何気なくキッチンへ目を向けた。
「……」
誰もいない。
当たり前なのに、なぜか少し寂しかった。
「お腹すいたなぁ」
前までは朝ご飯なんて食べなくても平気だったのに、最近は朝から空腹を感じる。
なんでだろう。
まぁいいや。
今日は仕事始めだ。
「よし、気合い入れていこう」
靴を履き、玄関のドアを開ける。
「行ってきます」
返事なんて返ってくるはずないのに。
なぜか、その言葉が自然と口をついて出た。
新年最初の満員電車は、相変わらず息苦しい。
いつもの駅で降り、会社へ向かう。
自分のデスクに着いた瞬間だった。
「おはようございます、先輩。」
結奈ちゃんが、意味ありげな笑みを浮かべながら声をかけてきた。
……嫌な予感しかしない。
「先輩って、一ノ瀬部長と付き合ってたんですね。」
「えっ!? ち、違うよ!」
思わず大きな声が出る。
「だって、目撃者もいたし、部長も否定してませんでしたよ?」
「本当に?」
「『お正月は先輩と一緒だったんですか?』って聞いたら、『ああ』って普通に答えてました」
「部長ぉ……」
なんでそんな誤解されるような返事をするの。
私は頭を抱えた。
「まぁ、そのあと『彼氏のふりを頼まれただけだ』って説明してましたけど」
「よかった……」
胸を撫で下ろす。
すると結奈ちゃんは腕を組み、ニヤリと笑った。
「でも私は、まだ怪しいと思ってるんですよねぇ」
「もういいってば!」
私は慌ててパソコンの電源を入れる。
「ほら、仕事するよ!」
「はーい」
結奈ちゃんは口を尖らせながらも、自分の席へ戻っていった。
私は画面を見つめる。
それでも、心のどこかに残る、この喪失感だけは消えなかった。
なぜか私は、一ノ瀬部長と一緒に『軽之神社』で倒れていたらしい。
記憶は曖昧だった。
でも、目を覚ました私は部長に向かって、
「恋人のふりをしてください!」
と、半ば強引にお願いした。
部長は驚きながらも、意外なほどあっさり了承してくれた。
そのまま二人で実家へ向かうと、家族は部長をすっかり気に入ってしまい、結婚の話まで持ち出す始末だった。
そうして私たちは、お正月を実家で過ごし、東京へ戻ってきた。
家へ帰った時、何かが足りないような気がした。
胸の奥にぽっかり穴が空いたような、そんな違和感。
でも、その正体はわからない。
気のせいだろう。
私はそう思うことにした。
ピピピピーッ。
目覚まし時計が鳴る。
「会社行きたくねぇよぉ……」
小さくぼやきながらアラームを止め、いつものように着替えを始める。
寝室を出て、何気なくキッチンへ目を向けた。
「……」
誰もいない。
当たり前なのに、なぜか少し寂しかった。
「お腹すいたなぁ」
前までは朝ご飯なんて食べなくても平気だったのに、最近は朝から空腹を感じる。
なんでだろう。
まぁいいや。
今日は仕事始めだ。
「よし、気合い入れていこう」
靴を履き、玄関のドアを開ける。
「行ってきます」
返事なんて返ってくるはずないのに。
なぜか、その言葉が自然と口をついて出た。
新年最初の満員電車は、相変わらず息苦しい。
いつもの駅で降り、会社へ向かう。
自分のデスクに着いた瞬間だった。
「おはようございます、先輩。」
結奈ちゃんが、意味ありげな笑みを浮かべながら声をかけてきた。
……嫌な予感しかしない。
「先輩って、一ノ瀬部長と付き合ってたんですね。」
「えっ!? ち、違うよ!」
思わず大きな声が出る。
「だって、目撃者もいたし、部長も否定してませんでしたよ?」
「本当に?」
「『お正月は先輩と一緒だったんですか?』って聞いたら、『ああ』って普通に答えてました」
「部長ぉ……」
なんでそんな誤解されるような返事をするの。
私は頭を抱えた。
「まぁ、そのあと『彼氏のふりを頼まれただけだ』って説明してましたけど」
「よかった……」
胸を撫で下ろす。
すると結奈ちゃんは腕を組み、ニヤリと笑った。
「でも私は、まだ怪しいと思ってるんですよねぇ」
「もういいってば!」
私は慌ててパソコンの電源を入れる。
「ほら、仕事するよ!」
「はーい」
結奈ちゃんは口を尖らせながらも、自分の席へ戻っていった。
私は画面を見つめる。
それでも、心のどこかに残る、この喪失感だけは消えなかった。