私が拾ったのは、千年前の皇子様でした
仕事終わり。

私は美緒と、いつもの居酒屋でお酒を飲んでいた。

「千紘さぁ、もう一ノ瀬部長と付き合っちゃえば?」

「いやいや、私なんて」

「だって、高収入、高学歴、高身長。それにイケメンでしょ? 逃したらもったいないよ〜」

「でもなぁ……」

そう答えながらも、胸の奥が小さく痛んだ。

何かが違う。

何か大切なものを忘れている気がする。

でも、それが何なのかわからない。

「そういえばさ」

美緒が私のスマホを指差した。

「なんで勾玉なんて付けてるの?」

「勾玉?」

慌ててスマホを見る。

ストラップには、小さな桃色の勾玉が揺れていた。

「え……」

こんなの、付けた覚えない。

「歴史好きに目覚めた?」

美緒は笑っている。

「いや……そんなことない……はず」

私は勾玉を指先でそっとつまんだ。

その瞬間だった。

――こんなにも美しい勾玉があるのだな。

知らないはずの声が聞こえた。

私は思わず顔を上げる。

――お揃いか。

――二つで一つなのだな。

胸が締めつけられる。

「っ……!」

頭の奥がズキッと痛んだ。

私は思わずこめかみを押さえる。

「千紘?」

美緒が心配そうに覗き込む。

「大丈夫?」

「う、うん……」

私は無理に笑った。

「ちょっと飲みすぎたみたい」

「じゃあ今日は帰ろっか」

「うん」

私たちは店を出て、それぞれ帰路についた。

「寒っ……」

一月の夜風は頬が痛くなるほど冷たい。

私は肩をすくめながら、薄暗い夜道を歩く。

街灯の明かりだけが、静かな住宅街を照らしていた。

その時だった。

ふいに足が止まる。

「……?」

目の前には一本の電柱。

それだけ。

何もない。

なのに。

ここで誰かと会ったような。

そんな気がした。

「気のせい……かな」

そう呟いて歩き出す。

でも、胸の奥の寂しさだけは、
どうしても消えてくれなかった。
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