私が拾ったのは、千年前の皇子様でした
「あの……お名前を伺ってもいいですか?」

私は恐る恐る尋ねた。

男性は優しく微笑み、頭を下げる。

「僕は、木梨悠真と申します」

その名前を聞いた瞬間だった。

「っ……!」

激しい頭痛が走る。

まるで閉ざされていた記憶の扉が、
一気に開いたように。

奈良での日々。

一つ屋根の下で過ごした時間。

雨の中、差し出された傘。

クリスマスの夜。

二人で選んだ勾玉のネックレス。

そして――

「我は必ず、お主を見つける」

涙が溢れた。

「大丈夫ですか!」

悠真は慌てて私を支えようと駆け寄る。

その手に触れた瞬間、
私の口から自然と言葉がこぼれた。

「……悠真」

その名前を呼ばれた悠真は、はっと息を呑む。

そして、自分の頭を押さえた。

「っ……!」

彼の瞳にも、少しずつ記憶が宿っていく。

遠い昔の都。

笑い合った日々。

別れの夜。

交わした約束。

そして、最後の口づけ。

悠真は震える声で、私を見つめた。

「……千紘か」

私は涙を流しながら、小さく頷く。

「うん」

胸の奥にぽっかり空いていた穴が、
ゆっくりと埋まっていく。

どうしてあんなに寂しかったのか。

どうして誰かを待ち続けていたのか。

その理由が、ようやくわかった。

悠真は優しく微笑む。

何も変わらない笑顔で。

「千紘」

「約束は、守ったぞ」

私は泣きながら笑う。

「うん。ありがとう。見つけてくれて」

私はそっと悠真の手を握った。

悠真も、その手を優しく握り返す。

二人の首元では、
色違いの勾玉が静かに揺れていた。

まるで――

千年以上の時を越えて、

再び一つになれたことを祝福するように。

――完――
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