私が拾ったのは、千年前の皇子様でした
アパートに着くと、私たちは順番にお風呂に入った。

悠真に会えた安心感で忘れていたが、
もう直ぐ冬だ。

家に着く頃には、二人とも寒すぎて震えが止まらなくなっていた。

そして、今日は悠真がご飯を作っていなかったので、
夕食はカップラーメンになった。

「しみるぅ〜」

冷えた体で食べるラーメンは、
いつもより美味しく感じた。

「そういえば、悠真はどこに行ってたの?」

不意に聞いてみる。

すると悠真は、ゆっくりとカップラーメンを置き、
少し悲しそうな顔をしながら話し始めた。

悠真の話によると、今日は一日中、求人を探したり、
働く方法などを調べたりしていたらしい。

しかし、どこも自分の身元を証明するものが必要で、
結局、何も成果がなかったようだ。

すると突然、悠真はつぶやいた。

「我はこの世では存在しない人間なのだな……」


その言葉を聞いた瞬間、胸が締めつけられた。

違う。

違う。

そんなこと、絶対にない。

気がつくと私は、悠真を強く抱きしめていた。

「そんなことない!悠真はちゃんと存在してる!」

「しかし……」

「身元が証明できるものがなかったとしても、
私が悠真の存在を証明してあげる」

「でも、それでは働くことなど……」

「働くことだけが支えることじゃないよ。」

悠真から、体を離し、今度は悠真の手を強く握る。

「今まで私がどれだけ助けられてきたと思ってるの?」

悠真の目をまっすぐに見る。

「ご飯作ってくれて。看病してくれて。迎えに来てくれて。そばにいてくれて。」

悠真も私の目をまっすぐに見つめた。

「それだけで十分なんだよ。」

その言葉に、悠真はとても驚いた様子だった。

「本当に、それだけでいいのか?」

「当たり前じゃん」

「そうか……」

悠真の顔が少しだけ緩んだ。

それを見て、私はゆっくりと悠真の手を離す。

そして再びカップラーメンを食べようとした時だった。

「麺が伸びきってる!」

私たちが話している間に、
カップラーメンの麺はパンパンに膨らんでいた。

「これの何が問題なのだ?」

隣をみると、悠真は美味しそうに伸びきった麺を食べている。

「私は伸びた麺は嫌いなの」

「好き嫌いは良くないぞ」

「そういう問題じゃない」

「では、なんなのだ?」

「もう!」

いやいや口に運ぶ。

やはり、伸びた麺は苦手だ。

「うぅ……」

私が口の中に入りきらず、そのまま止まっていると、
悠真が急に笑い始めた。

「なんだその顔は」

「じょうがないでじょ」

「何を言っているのか、わからないぞっ」

悠真が腹を抱えて笑い出す。

悠真が笑う。

私も笑う。

カップラーメンは伸びきってしまったけれど、
そんなこと、どうでもよかった。

この時間が。

この何気ない日常が。

ずっと続けばいいのに、と願ってしまった。
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