敵はママ!? 十歳ミミのサバイバル日記
第4話 パパを調べる
──嘘だよね。
おふとんの中。
真っ暗な天井を見つめる。
眠れない。
頭の中で、ぐるぐるする。
あの言葉。
「……あんたの希望通りにな」
耳から離れない。
違う。
きっと脅してるだけ。
お金を取ろうとしてるだけ。
だって。
パパは優しい。
ミミを助けてくれた。
抱きしめてくれた。
回転寿司だって連れて行ってくれた。
なのに。
胸がざわざわする。
眠れない。
時計を見る。
午前二時。
リビングが、まだ明るかった。
***
次の日。
朝ごはん。
焦げたトースト。
スクランブルエッグ。
パパは、いつも通りだった。
「転校した学校、もう慣れたか?」
「うん。だいぶね」
「友だちできたか?」
「それは、まだかな」
パパが笑ってる。
優しい。
……昨日のことなんて、なかったみたい。
勇気を出して聞いてみた。
「あの人……誰?」
パパの手が、一瞬止まった。
ほんの少し。
でも。
止まった。
「……ママの事故の……運転手さんだよ」
少しかたい表情。
「なんで来たの?」
沈黙。
「示談の相談」
短い。
それだけ。
「ミミ、もう気にしなくていい」
そう言って。
無理やり話を終わらせた。
胸が、ざわっとした。
──嘘。
なんとなく分かった。
パパ、嘘ついてる。
***
それから。
違和感が増えた。
夜、
また電話。
低い声、
怒ってる。
「だから今は無理だって言ってるだろ」
沈黙。
「もう払っただろ」
払った?
何を?
誰に?
わたしに聞こえないように。
ドアを閉めて小声で話している。
そういうことが、前より増えた。
***
ある日。
洗濯物をたたんでいた時だった。
机の上に、
茶色い封筒。
少しだけ開いている。
中が見えた。
一万円札だ。
封筒の裏に、「500000」
え。
いち、じゅう、ひゃく、せん、まん
50万円だ。
心臓が跳ねた。
こんな大金。
見たことない。
パパ、うちにそんなにお金あったっけ?
その時。
後ろから声。
「ミミ」
びくっ!!
振り返る。
パパ。
笑ってる。
でも。
なんだか怖い。
「人のもの、勝手に見ちゃダメだぞ」
優しい声。
なのに。
なぜか、怖かった。
***
違和感は、まだあった。
事故の日のこと、怪しい。
何気なく聞いた。
「ねえ、パパ」
カレーを食べながら。
「事故の日って、お仕事だった?」
パパのスプーンが止まる。
「……なんで?」
低い声。
怖い。
「えっと……なんとなく」
沈黙。
長い沈黙。
それから。
「仕事だよ」
笑う。
でも。
目が笑ってない。
「どうして?」
「ううん……」
聞かなきゃよかった。
空気が重くなる。
だって、あの日、わたしが家に帰って来た時、
パパが家にいた。仕事にも行かずに
オンライン会議の時はノートパソコンを壁に向けて開いているのに、
あの時は、棚の上に置きっぱなしだった。
使っていない証拠。
その夜、
わたしは思った。
──パパ、何か隠してる。
***
さらに数日後。
リビング。
パパが電話していた。
少し開いたドア。
聞こえてしまった。
「保険金が入ったら……」
息が止まる。
保険金?
ママの?
「だから、待ってくれ」
低い声。
疲れた声。
「……約束しただろ」
胸が冷たくなる。
何の約束?
誰と?
怖い。
怖い。
でも。
知りたい。
知らないと。
また。
地獄になる気がした。
その夜。
わたしは決めた。
──調べよう。
パパのこと。
本当のこと。
もし、
本当に、
パパがママのことを──?。
そこまで考えて、
ぶんぶん首を振った。
違う。
そんなわけない。
だって、
パパは、
世界でたったひとりの味方だから。
……だよね?


