敵はママ!? 十歳ミミのサバイバル日記

第6話 ミミは教育虐待を受けている

「おはよう、ママ」

食卓には、焼き鮭と味噌汁。

いつもの朝。

いつものママ?



ちがう──今日は、少しちがう。なぜ?



そうだ。

昨日、私は嘘をついたんだった。

先生が、ミミを疑ってるって。

本当は、そんなこと言われてないんだけど。



でも。

みきちゃんの消しゴムのことを聞かれて、とっさに嘘が口から出た。

すると。

ママは、信じた。

しかも──。

あの『ふりかえりテスト』を、やらなくて済んだ。

英語も免除。

……信じられない。

超ラッキー。



ママは昨夜、みきちゃんの消しゴムの話を何度も聞いてきた。

「先生がミミを疑ったの?」

「何もしてないのに?」

私はうつむいて、小さく答える。

「……うん」

嘘を、重ねた。

するとママの顔が、みるみる変わった。

「なんですって!?」

烈火のごとく怒り出した。

先生への怒り。

学校への怒り。

正義感いっぱいの顔。

そのせいで。

英語のことなんて、一言も言われなかった。

──え。

こんなこと、ある?

夜の十一時半。

眠くて頭がぐらぐらする中で英語。

間違えたらやり直し。

そのあと。

ママ手作りのふりかえりテスト。

学校の勉強。

生活態度。

今日の反省。

全部チェック。

あれ、本当に嫌だった。

苦しかった。

つらかった。

……あれは、虐待かもしれない。



だから。

やらなくて済むなら。

私は、毎日でも嘘をつく。



だって。

そうしないと、生き残れない。

ママと暮らすには。

嘘つくしかない。



「ミミ」

はっと顔を上げる。

ママがお茶を飲みながら、静かに言った。

「学校で先生に、昨日のことを謝罪してもらいなさい」

……え?

「先生がミミを疑ったんでしょう?」

にっこり笑う。

でも、目が笑ってない。

「自分できちんと説明できるわよね?」

心臓が、どくんと跳ねた。

おはしを持つ手が震える。

「……あ、はい」

声がうまく出ない。

どうしよう。



もし。

先生が、

『そんなこと言ってません』

って言ったら?

嘘がバレたら?



ママは──。

きっと、もっと怒る。

もっと、怖い。

胸がぎゅっと苦しくなった。

学校に行きたくない。

でも。

逃げられない。
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