βの私に執着した元カレαの執着愛が止まりません
「俺、好きなんだよね。沙梨が食べてる姿見るの」
一足早く、オムライスを完食した耀は、残り半分は残っているオムライスを食べ進める私を見ながら微笑む。
耀は食べるスピードが早いから、高校時代も私はいつもこうやって食事シーンを耀に見つめられる場面が多かった。
あの時は、耀と付き合っていたし、こんな甘い空気も楽しめていたけれど、大人になった現在ではこの光景は居た堪れない。
「緊張、するから、あまり…見つめないで」
「え〜?やだ。やっと大好きな沙梨の可愛いところ間近で見られるのに、我慢なんてできないでしょ」
あ、甘い…。
オムライスにかかったケチャップは酸味が聞いているはずなのに、耀の甘さで胃がもたれそうな勢いだ。
これは食事に集中するためにも、一度牽制した方がいいかも。
そう思った私は、意を決して耀に問いかけた。
「汐見くん。私たち…別れてもう、10年近く経つんだよ。だから、」
「耀」
”これ以上、好き好きアピールはやめてほしい”と続けることを止められた。
私の話を遮っておきながら、耀は笑顔を崩さない。
それがまた、プレッシャーを強く放っている。
「さっきも、言ったよね?耀って呼んでくれないのって」
「だって…私たち、もう別れて」
「ねぇ、さっきから俺たちの関係は終わった風に振る舞ってるけどさ…俺、納得してないんだよね」
「え…?」
「俺がαで、沙梨がΩじゃないからって、運命の番になれないっていう沙梨の別れ言葉は受け入れられない。だって、またこうして俺たちは再会して、また一緒に過ごしてる。この事実こそ、”運命”だろ?」
ああ、神様。
どうか、ウソだと言ってください。
平凡なβである私のことを、10年近く追い求めていたαがいるなんて。
それに、病院の廊下で耀と再会したことが運命とは、どうしても思えないのだ。
耀なら、やりかねない。私が今日、あの時間、あの場所に現れることを事前にリサーチして、先回りしてあの場にやってきたのではないかと、脳裏で警鐘が鳴っているのだ。
どうやってリサーチしたのかとか、高校時代の友人とは全く縁遠いのになぜ私の所在がわかったのかとか、そんなことはわからない。
でも、本能でわかる。支配欲の強いαなら、やりかねない、と。
「前にも言ったけど…私、βなんだよ」
「うん、そうだね」
「っ、どうして?αの耀なら、私じゃない、他の運命の番に出会うことが決まって」
「やっと、耀って呼んでくれたね」
「話を逸らさないで!」
自分のペースにばかり私を追い込んで、私の言うことには耳を傾けそうにない彼に、ついに声を荒げてしまった。
ピクッと、ほんの少し耀の笑顔がひくついたのが分かった瞬間、ヤバい、と察知する。
「ご、ごめん…」
「はぁ、頑固なのも変わらず、か…」
甘い空気が一転、瞬間冷凍のように空気が冷え込んだことは私の第六感が全身で感じ取っている。
付き合っていた頃でさえ、耀は怒る感情を表に出さない人だったから、こうやって明らかに溜息をつかれて重い空気を出されると、どうしたらいいのか分からなくなってしまうのだ。