βの私に執着した元カレαの執着愛が止まりません
「おはよう、沙梨」
「耀…おはよ」
すっかり呼び名は「耀」に定着してしまった。
最初は「汐見くん」と小さな抵抗をしていた私だけど、「汐見くん」呼びするために「耀」と本人から訂正されてしまい、話が進まないので、私が根負けしたのだ。
メッセージでの約束通り、耀は私のマンション下に自家用車で10時ちょうどにやってきた。
助手席に座り、シートベルトを閉めて前を向くと、口元が緩んでいる耀と目が合う。
「相変わらず、朝弱いね」
「え…?」
休日だから気を抜いて、待ち合わせの30分前に起きたのがバレたのか、心の中でぎくりとした。
「帽子、似合ってる。かわいい」
「…っあり、がと」
これは、完全にバレてる。
なぜ私がキャップをかぶっているのかというと、紫外線を気にして、とか眩しいから、とかそんな理由ではない。
寝坊して、髪のセットまで手が回らなかったためのカモフラージュだったのだ。
それを全て、出会って数十秒で見破られた私は、まだ春先なのに手汗が止まらない。
「ねぇ、どっちがいい?アイスコーヒーと、カフェラテ。ちなみにどっちも無糖。ちなみにカフェラテはソイミルク」
「カフェラテが、いい」
「どーぞ」
発進前、用意周到に差し出された私の好物。
甘いドリンクが苦手なことも、牛乳が苦手でラテ系はソイミルクを好むことまで、私の好き嫌いを熟知している耀は、どっちを私が選んでも良いように買ってきたのだろう。
一口飲んで、「美味しい」と伝えると、「俺にもちょうだい」と返ってきた。
私の口をつけたストローそのままにカフェラテを差し出すと、耀も自分が飲んでいた無糖のアイスコーヒーを差し出してきた。
これは、交換ってこと?
耀の意図を汲み取り、渡されたアイスコーヒーをそのまま刺してあったストローで一口飲んで彼に返すと、私が選んだカフェラテが返ってきて、「どっちも美味しいね」と感想を言い合ったあと、車はゆっくりと耀の運転で発進した。