夜の風景




第1話 – 14ページ目:いつもと違う朝


午前7時38分。


陽の光がビルの谷間から差し込み、濡れた街並みを柔らかく照らしている。


金色の優しい光――

まるで、街がようやく目を覚ましたかのようだった。


ミヤが学校の正門をくぐる。


その足取りは、いつもよりずっと穏やかだった。

あの鋭い確かさはなく――

髪は束ねていたが、何本かが風に遊ばれ、顔の上に落ちている。


その眼差しは――

柔らかくなっていた。


チャイムの音が喧騒に消える…

しかしミヤには、すべてが昨日よりずっと静かに感じられた。


友人たちが玄関前に集まっていた。


いつものメンバー。

いつもの大きな笑い声。

いつもの、含みのある視線。


その一人、サトウが、変わらぬ調子で言った。


「ミヤ! 今日、あの転校生、ちょっとからかう? 感じ悪いんだよね。」


数人が笑う。


ミヤは何も言わなかった。


その目は、少し離れたところに向いていた。


あの少女だ。木陰に座り、眼鏡をかけ、本に没頭している――

一人で。


突然――

彼女の心の中に、声が響いた。


「強く見えるために誰かを傷つけるのは…違う。」


イロの声だった。

静かに、しかし確かに。


ミヤは深く息を吸った。


友人たちの方へ向き直る。


「…やめとく。今日は、そういう気分じゃない。」


サトウが眉を上げる。


「え? ミヤが? いつも最初に仕掛けるの、お前だろ!」


ミヤは微笑んだ。

小さな、嘲りを含まない笑みだった。


「飽きたんだ…違う自分でいることに。」


一瞬の沈黙。


友人たちは顔を見合わせる。


サトウが肩をすくめる。


「ま、いいけど…なんか変わったな。」


ミヤは答えず、背を向けた。



---


花壇のそばのベンチへと歩いていく。


腰を下ろす。


涼しい風が吹く――

花の香りを運んでくる。


高価な香水でもなく…

人工的な匂いでもなく…

ただの、素朴で生きている香りだった。


彼女はノートを開いた。


ペンを手に取る。


しばらく白いページを見つめていた…


そして、書きつづった。


「今日わかった――

強くなるためには、優しくなければならない。」


手が止まる。


自分の文字を見つめる。


無意識に――

ひとつの景色が心に浮かんだ。


コーヒーカップ。

ゆらりと立ち上る湯気。

カフェの柔らかな灯り。

灰色の瞳。

一枚の紙片。

そして、窓を伝う雨の音――


彼女は微笑んだ。


誇りからではない。

勝利からではない。

ただ、新しい感覚から――


静けさから。
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