夜の風景
約束の夏、そして…
第3話 – 9ページ目:三ヶ月が過ぎて (夏と休み)
6月下旬 – 学校、期末試験最終日
最後のチャイムが鳴ると、空気の中の緊張がふっと解けた。
ミヤはそっと息を吐き、ペンを机の上に置いた。ノートを閉じ、ぼんやりと教室を見渡す。
ユカが興奮気味に立ち上がった。
「やっと終わった!夏だ!」
ハナがバッグを肩にかける。
「海行こう!絶対行こう!」
リナが、いつもの穏やかな笑顔で言った。
「まずは…ちょっと休もうよ。」
ミヤは彼女たちを見て、微笑んだ。
大げさに興奮しているわけでもなく、疲れ果てているわけでもない。ただ、静かに。
陽の光が窓から机の上に落ちている。教室は、少しずつ静かになっていく。
廊下 – 放課後
ミヤとユカが、窓際に立っていた。
夏の熱い風が、わずかに開いた窓から吹き込む。
ユカが、肘でそっとミヤの脇をつついた。
「ねえ、あの約束…覚えてる?」
ミヤは、一瞬だけ間を置いた。それから、微笑んだ。
「…うん。」
あの手紙、イロのメッセージ――「夏祭り、一緒に行こう」という言葉が、まだ彼女の中で生きていた。
三ヶ月が過ぎた。
しかし、何も消えてはいなかった。
ただ、待っていた。
ユカが、声を潜めて言った。
「夏祭り、ほんとに楽しみだね。」
ミヤは外を見た。
木々は青々と茂り、生き生きとしていた。
春は過ぎ去り、夏が来ていた。
夜 – ミヤの部屋
ミヤはベッドに横たわっていた。
窓は開いていて、外からは蝉の声が聞こえていた。
空気は暖かいけれど、不思議と心地よい。
彼女はスマホを手に取った。
画面に映るのは―― 「イロ」。
古いメッセージをスクロールする。
「行く。」
「約束する。あの夜、ちゃんと話す。」
「待っててくれる?」
ミヤはスマホを胸の上に置いた。
天井を見つめる。
そっと、唇が動いた。
「待ってるよ。」
間。
「ちゃんと、ここで。」
彼女の目蓋は、ゆっくりと重くなっていく。
そして、眠りは、焦ることなく訪れた。