夜の風景

約束の夏、そして…



第3話 – 10ページ目:夏の空の下で書く


場所: 近所の小さな公園 – 夏の暑い午後


ミヤは木製のベンチに座っていた。


夏の熱い風がプラタナスの葉の間を抜け、影をノートの上で静かに揺らしている。


暑かった。しかし、耐え難いほどではない。

むしろ――生きていることを感じさせる、そんな温かさだった。


少し離れたところで、子供たちが凧揚げをしている。

老人が、ベンチの周りを静かに掃いている。


生活は、流れていた。

音もなく。しかし、確かに。


ミヤはペンを手に取り、ノートに書きつづった。


人生は天気のようなもの。

降ったり、晴れたり。

悲しみが永遠に続くわけでもなく、

喜びがいつまでも残るわけでもない。

たぶん、生きるコツは――

完璧な日を待つのではなく、

今日という日を生きること。

この瞬間のために。

吹く風のために。

手のひらに落ちる光のために…

遠くにいるかもしれないけれど、

まだあなたのことを考えている、あの人のために。


ペンを置いた。


顔を上げる。


空は青かった。


ひとつの白い雲が、ゆっくりと、焦ることなく流れている。


ミヤは、そっと唇を動かした。


「イロ…今、どこにいるの?」


沈黙。


視線を空に留めたまま。


「何してるのかな…誰といるのかな。」


間。


それから、もっと静かな声で。


「でも…いいや。」


ノートを少しだけ閉じる。けれど、完全には閉じない。


「今は、この時間でいい。」


風が、また吹いた。


ノートのページが少しだけ開き、その言葉たちが夏の光の中で揺れる。


ミヤは、ただそれを見つめていた。


過去でもなく、未来でもなく。


ただ、この瞬間を。
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