夜の風景

最初の雪

第四章 – 第十ページ:秋は静かに過ぎていった


9月下旬 – 初秋


あの夜から、数週間が過ぎていた。


ミアは、もうあのパーティーについて何も話さなかった。


アイロのことも。


サクラのことも。


白鷺グループのことさえも。


けれど、沈黙しているからといって、忘れたわけではなかった。


毎日のように、心の片隅には同じ疑問が残っていた。


アイロは、本当は何者なのだろう?


なぜ、あのカフェで働いていたのだろう?


そして、なぜ彼の名前が、この街でも有数の大企業と並んでいたのだろう?


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10月が過ぎた。


日に日に、空気は冷たくなっていった。


緑だった葉は、少しずつ黄色やオレンジ色へと変わり、そして一枚、また一枚と枝から離れていった。


ミアは学校帰り、以前と同じ古い通りを通ることが多くなっていた。


時々、あのカフェの前で立ち止まる。


けれど、中には入らなかった。


「Moonlight Café」の看板は、今も扉の上に残っていた。


でも、そこにアイロの姿はなかった。


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11月がやってきた。


朝はもう、ジャケットなしでは外に出られなくなった。


湿った土と、乾いた落ち葉の匂いが、街のあちこちに漂っていた。


ある朝、ミアは学校へ向かう途中で、木々の多くがほとんど葉を落としていることに気づいた。


足を止める。


そして、葉のなくなった枝を見上げた。


ミアは小さくつぶやいた。


「もうすぐ冬だ。」


その瞬間、不意に去年の冬を思い出した。


雪の降る日々。


あのカフェ。


曇った窓ガラス。


そして、カウンターの向こうでコーヒーを淹れてくれていたアイロ。


胸が、少しだけ苦しくなった。


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11月下旬


最後に残っていた秋の葉も、すべて地面へと落ちていた。


ミアは机の上にノートを置き、静かに書き始めた。


「秋は、いつも静かにやって来るわけじゃない。


時には、いくつもの疑問を連れてくる。


時には、大切な人を自分の人生から遠ざける。


そして時には――


まだ知らないほうがよかったことまで、見せてしまう。」


ミアはペンを止めた。


しばらく考えてから、もう一行を書き加えた。


「どれだけ時間がかかっても……


冬は、いつかやって来る。」


ミアは静かにノートを閉じた。


---


12月初旬 – 冬の最初の寒い朝


ミアは朝早く目を覚ました。


窓の外は、灰色の空に包まれていた。


カーテンを開ける。


そして、数秒間、ただ外を見つめていた。


空から、小さな白いものがいくつか舞い落ちていた。


雪。


冬、最初の雪だった。


ミアは静かに微笑んだ。


そっと手を窓ガラスに添える。


「雪……。」


白い粒は、次第に数を増していった。


街は少しずつ、白く染まっていく。


そしてミアは、なぜなのか自分でも分からなかった。


けれど、雪を見た瞬間――


最初に思い浮かんだのは……


アイロだった。


冬が、再びやって来た。


けれど――


今度は、去年と同じ冬ではなかった。


つづく……
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