ギミック・ラブ  ~年下小悪魔の上手な飼い方~
【1】ドタキャンされた夜の、過ごし方
「え?」

廊下で足を止めて、私は小さな声をあげる。

『ゴメン、急にトラブってさ。もうちょいかかりそうなんだ。今度埋め合わせするから』

電話の向こうから聞こえてくるのは、急いた様子の声。

「あー、そっかぁ」

11月なかば。日は沈み、眼前には夜の街が広がっている。
ちょうど今まさに会社を出ようとしていたところだけど、急なら仕方ない。

「わかったわ、こっちは気にしないで。残業頑張ってね」

通話を切り、スマホをバッグにしまう。

──さて、どうしよう。

「せっかくの休日前夜だしなぁ……」

今週もよく働いた。
この一週間が、このまま終わってしまうっていうのもなんだかもったいない。

「うーん。奈々(なな)、付き合ってくれるかなぁ」

声に出して呟き、私は来た道を戻った。
さして広くないオフィスに入るとその人物を見つけ、声をかける。

「奈々、やっぱ一緒に飲みに行こ!」

同僚の内村奈々は帰り支度の手を止めパッと顔をあげると、

「ん? 何言ってんの? 彼氏持ちの美咲さんは、デートだとか言ってさっさと帰ったんじゃなかったっけ?」

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