ギミック・ラブ ~年下小悪魔の上手な飼い方~
お客様が「こいつ全然謝らない」と言っていたし、私が入ってからの柚木くんは終始無言だった。
「悪いと思ってないのに謝りたくありません」
「……っ」
落ちつきはらった声で言い切る顔が、まるで仮面をつけているように見えてきた。
表情に乏しいけど、実直で有能ないい社員だと思っていたのに……
こんな感じの子だったの?
「あれ、里中さんも怒っちゃいましたか? でもそんなわけで、俺も怒ってるんですけど」
「は? 何言って──」
理解の域を越える切り返しに、私はなんて言えばいいのかとっさにわからなかった。
言葉を失う私の隣で、柚木くんがスッと立ち上がる。
反射的に首をすくめる私を柚木くんはじっと見下ろしてきて、呟くように告げた。
「書きたくなかったけど報告書書きました。里中さん、ご褒美ください」
「え……? な、何、ご褒美って」
「そんな怯えた顔しないでよ。別に怖いことはしません」
でよ? 今、でよって言った?
「だから、何を──」
次の瞬間、声を封じるように唇がふさがれた。
視界は何か黒いもので覆われる。多分、柚木くんの髪だ。
「っ……!?」
嘘でしょ……私いま、キスされてる?