ギミック・ラブ ~年下小悪魔の上手な飼い方~
【6】平凡な幸せの、信じ方
思いがけない遭遇は、その翌日だった。
昨日の拓巳とのことを思うとどうにもやり切れなくて、私は一日、沈んだ気分だった。
仕事が終わる頃には心身共に疲弊してて、憂さ晴らしでもしたい気分。
でも奈々に打ち明けられる話じゃないから、結局一人で飲みに行くことにした。
しょっちゅうは行かないけど、一人でお酒を飲むのも嫌いじゃない。
一人の時はもっぱら落ち着いたバーで、私の行きつけは駅前の裏路地にある《Moon Drop》というお店。
マスターはおっとりした温厚な男の人で、店の雰囲気もいい。
マスターと雑談でもして、気分転換しよう。
そう決めて、会社を出るとまっすぐその店に向かった。
中に入るとまだ早い時間だからかお客は少なくて、私はカウンターの真ん中に陣取る。
好きなマティーニをオーダーして、口をつけて。
マスターに「けっこう久しぶりだね」と言われたから、「そうですね」と返していた、その時だった。
カランカランと呼び鈴が鳴って、店内に新たな客が入ってきたことを告げる。
扉はちょうど真後ろになるから、私にはその客の姿を見ることはできない。