ギミック・ラブ  ~年下小悪魔の上手な飼い方~
「────!!」

掌が汗ばむ。
彼女が柚木くんを“瞬也”と呼んだ妙に甘い声が、頭の中で何度も繰り返される。

私は完全に動揺して、二人の姿をきちんと見れていなかった。
だから柚木くんが唐突に振り返った時、なんの反応もできなかった。

「……美咲?」

「あ……」

どうしよう。見られてしまった。

強張った顔で立ち尽くしている私。立ち聞きしていたことにも気づかれただろう。

内心では狼狽しているのに、喉はカラカラに渇いていて、ごまかす言葉のひとつすら出てこない。
気づくと私は、逃げるようにその場から走り出していた。

「待てよ、美咲!」

呼び止める柚木くんの声が耳に届いたけれど、それを振り切るように、エントランスから外へと飛び出した──。


〇●


無意味なことをした。
つくづくそう思い、リビングで深いため息をこぼす。

逃げたところで、柚木くんの家はここだ。顔を合わさないわけにはいかないのに。

いや、でも、本当に帰ってくるんだろうか。

あの後私はすぐに帰宅したけれど、柚木くんはまだ帰ってこない。時計の針はまもなく12時を指そうとしている。

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