愛が壊れた時、策略御曹司の罠に堕ちていく
ちっとも悪いと思っていない表情の蓮は、満足顔で、痕を指先でなぞっていた。
「何するのよ」
頬を叩いてやろうかと手を振り上げたが、その手を握り指を絡められて、薬指に歯を立て甘噛みする蓮。
「…痛い」
「虫除けだ。ここはそのうちな」
壁をノックする音に、振り返ると、そこには店長が…銀縁メガネの奥から冷ややかな視線を送っていた。
「副社長、仕事中ですよ」
「邪魔が入ったな。菜穂、ネックレス忘れるなよ」
頭を撫でて、店長と入れ違いで出て行った。
どうしよう…見られてた?
店長が視線で私の首周りを見回す。
「まぁ、いいでしょう。今後は、あの人に好き勝手させないように気をつけてください。ここ、何かで隠してから売り場へ戻りなさい」
店長がスタッフルームを出ていき、慌てて鏡を覗く。
小さな赤い痕が一つ、生々しく目立っていた。
うわーと、頭を抱えてしゃがみ込む。
見られた。
どこから聞いていたの?
それもそうだけど、なに?
なんなの?
蓮のあれはなに?
パニックで、思考回路がショート寸前。
新たな悩みが追加されて、今は、考えることを放棄した。
コンシーラーを塗り売り場に戻ると、店長に視線で確認されて、何も言ってこないところをみると、及第点がでたようだ。