ハイエンドマリッジ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~
彼の行動には驚かされたし、父まで巻き込んで危うい真似をしたのは簡単には見過ごせないけれど、それ以上に康惺さんと仲直りできたようで私は安心した。

そんな中、慌ただしくも充実した新年度を迎えたのだが、その一方で私は体に小さな違和感を覚えていた。

体調が悪いわけではないけれど、なにかがおかしい。なにより生理が遅れている。

これはもしかして……という予感を胸に、康惺さんには内緒でクリニックの予約を入れた。



冷え込みが少しずつ和らいで、春めいた風が吹くようになった。もうルーフバルコニーに出てもそこまで寒くは感じない。

十九時、珍しく私より早く帰宅した康惺さんがシャツ姿で煙草を吸っていた。

私はバッグをソファに置くと、スプリングコートを着たままリビングの掃き出し窓から外に出た。

「なんだか、たそがれてません?」

隣に行くと、彼は気だるい笑みを浮かべて手すりにもたれながら煙を吐き出した。

「今日、正式に親父の退任が決まった」

舘華家のご当主が経営の座から退く。社長のポストがぽっかり空くということだ。

「そうでしたか」

頷いて、煙草を吹かす彼の横顔を覗き込む。

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