不良ヤンキーくんは、私だけにずるい
傷だらけの出会い
私はそこら辺にチラホラいるただの女子高生。
両親もそこそこ稼いでて、お金に困るような事は1つもなかったし、友達にも恵まれていた。
将来の夢は決まっているが、まだまだその夢には辿り着けそうにない。
もちろん現在進行形で挑戦中。
1番青春出来るって時に、彼氏は欲しいけど私には男運がないのか出会った人はいつもくだらないほど性格が悪い。
あぁ......今日もいつもと変わらないなぁ。
通勤ラッシュの時間帯なのに私が通る道だけは車通りが少なく静かな道。
聞こえるのは風が吹き抜けてザワザワと木々が揺れる音だった。
「あぁ......今日もいつもと変わらないなぁ。
なにか刺激が欲し...ぃ」
その時
私の視界に映るものに少しずつ小声になっていった。
2つめの点滅信号に差し掛かろうとしていた時
額には傷だらけで制服は土でボロボロの男性がフラフラ歩いている。
面倒な事に巻き込まれたくないから絶対に無視します。
男性とすれ違ったその瞬間
男性がこちらに向かってフラッと倒れて私の肩に頭を直撃。
「.....は?」
私は男性を支えながらトントンと肩を叩く。
返事もないし反応もない、男性の体重だけが私に乗っかった。
当たり前に私には男性の体重を支える力なんてない。
「え、ちょっと、おも....」
バランスを崩した私の足が後ろにふらついた。
あ....やばッ
ドサッ
あはは....一緒に倒れちゃったよ.....
男性の全体重が私の体の上にのっかって
しばらく身動きとれなかった。
「すみません」
私はそう言って男性の肩を何度も強く叩いた。
その時、男性の体がぴくりと動いて体を少しずつ起こす。
肩を叩いて起こしたものの顔面傷だらけは流石に怖いな.....
「イッてぇ.....」
男性は髪の毛を掻き上げながら掠れた声だった。
私はフイっと顔を逸らす。
私は顔を逸らしたまま視線だけを男性に向けた。
......は?
何この人。
私の体は鉛(なまり)が流しこまれているみたいに固まった。
長いまつ毛にキリッとした目元。
芸能事務所に所属していそうな顔つきだった。
「何、ガンつけてんの」
男性の目が鋭く私に向いて背筋が凍る。
「あ、いや、何も....」
「わりぃな」
男性はそのまま立ち上がったが、フラフラしていて、壁にもたれかかるように歩いて行く。
今すぐにでも再び倒れそうな歩き方だった。
いつもならそのまま私も登校するであろうがこんな傷だらでフラフラしてる人を見逃す訳にはいかない。
「大丈夫ですか?傷だらけで....」
「別に」
掠れた声で紡がれたその言葉が、心臓に鋭く突き刺さったようだった。
私は咄嗟に男性の手を掴んだ。
「ダメです、手当しないと」
自分から男性の腕を肩に回したまま歩いて、玄関の前で立ち止まった。
その瞬間、肩に回していた手がストンと落ちた。
男性は立てずにいたのか玄関の前で腰を下ろす。
私は上から見下ろすように見ていると威嚇されそうだったので、男性の目線を合わせるようにしゃがみこんだ。
「何、お前」
後頭部に男性の手が回ってグッと顔を近づけられる。
「家に男連れ込もうとして、なにしてーの?」
心臓がドクンと跳ねた。
別にやましいことをしたくて連れきたわけじゃない。
なのに
初対面の人になんでドキドキしてんの私......
だけど、軽い女だと思われたくないので、平然を装うようにした。
「ただの手当なので家に入ってください」
「当たり前ですが、適切な距離でお願いします」
男性が口元に手を当てて、意地悪そうに笑った
「何もしねぇよ」
その瞬間だった。
強い風が私の頬を刺して、それと同時にサラッと髪の毛がなびいた。
傷だらけのはずなのに、驚くほど綺麗な笑顔で
普通の男の子に見えた。
ドクン
再び心臓が跳ねた。
この人一体何者なの.....?
男性の笑顔を見つめたまま
一瞬だけ目が離せずにいた。
「その間抜け顔どうにかなんねーの?」
彼は私の頬をむにっと手で掴んだ。
「え?」
間抜け顔?私今間抜け顔だった....?
頬を触れている男性の手が熱くて、私も顔が熱くなる
男性はクスッと笑って手を離す。
「で、家入っていいんか?」
「どうぞ」
男性は私の腕を掴んでゆっくりと立ち上がって、肩に腕を回した。
男性の体重に耐え切れず私もフラフラして壁に手をついて、なんとかそのまま玄関の扉を開けて靴を脱いだ。
男性は玄関に着くとドサっと座り込んで深いため息をついた。
まぁ、あんなにボロボロで家に入ると安心するよなぁ。
私はとりあえず、玄関でお茶を飲ませる事にした。
冷蔵庫を開けてキンキンに冷えたお茶をコップにいれて差し出した。
「飲みますか?」
男性にお茶を渡すとゴクゴクと飲む勢いにびっくりした。
喉乾いてたんだ.....声が掠れてたのもそのせいか。
私の部屋は玄関入ってすぐ左なので、再び腕を首に回して連れて行く。
私の部屋に入ると安心したのか
男性はそのまま横になって動かなかった。
「ちょっと、待っててください」
私はリビングにある救急箱を取りに部屋を出た。
砂がついていた為、綺麗に洗われたペットボトルに水を入れて部屋に戻った。
「砂、取りますね」
私はさっきのペットボトルと救急箱に入っていたガーゼを準備して傷口周りの砂を慎重に落とした。
人の手当なんかした事ないから慣れない手つきだった。
「下手くそかよ」
さっきまでの掠れた声とは違って低く男らしい声だった。
「初めてなんですよ」
私はそのまま砂を落とした。
よく見てみると深い傷口が数箇所あった。
痛そうだったが何か変な菌でも入って感染なんか起こしたら大変だ。
消毒液を傷口に垂らすと男性の体はビクッと動いた。
「いてぇ」
当たり前に痛いだろうけど、男性の事を思うとやめられなかった。
深い傷口にはワセリンガーゼと医療用のテープを貼った。
浅い傷口は絆創膏で十分でしょ。
「終わりましたよ」
反応がなかったので、私は男性の方に視線を向けるとスヤスヤ眠っていた。
さっきまで痛がってたのにもう寝てる......
学校はどうするんだろう。
男性の両親に連絡はしないでいいのかな?
でも、まぁ仕方がない。
何があったかわからないが、大変だったんだろうと言うのはすごくわかる。
私はこのまま寝かせておく事にした。
時計を見上げるとちょうど8時を過ぎ頃だった。
私の両親もそこまで厳しい人ではないから2人にメールだけして学校に行った。
学校に着くと、校門の前では先生たちが挨拶運動をしている。
「おはようございます!」
大きな声で挨拶するのは担任の''安藤''
熱血だなぁ.....
「梨々香おはよう〜」
私を後ろからギュッと手を回してきた。
フワフワするこの匂いは....
''佳奈''だ
高校に入って1番最初にできた友達だった。
入学初日、校章の付け方が分からなかった不器用な私に教えてくれた。
「梨々香、朝から疲れてる?」
佳奈が私の顔を覗き込んだ。
朝イチでこの顔は無敵すぎる顔立ちに女の私でもキュンとくる。
普通は顔は浮腫むし、私は朝から鏡と睨めっこですけど....
私は今日の出来事を佳奈に話しながら教室に入って席についた。
「何それ、めっちゃ恋の予感じゃん!」
佳奈の声は今まで以上に大きく教室全体に響きわたった。
騒がしかった教室が一瞬でシンとなり私たちに視線を向けた。
「佳奈、ちょっと声でかいよ」
佳奈は自分の口元を押さえて、私に小さく声をかけた。
「で、今その人何してるの?」
「とりあえず家に置いてきたけど.....」
佳奈は驚いている表情だった。
無理もない、知らない男を家に連れ込んでおいてくるなんて、びっくりするのは当たり前でしょ。
その瞬間、教室の扉が開いた。
「席につけー出席とるぞー」
さっき校門にいた熱血教師''安藤''
外ではあまり分からなかったけど教室では声が響く。
そんなに大きい声出さなくても聞こえるのに熱血教師はやたらと声がでかい。
先生は名簿を開いて出席を取る。
生徒達の名前を1人ずつ確認した。
「神崎〜」
教室にいた生徒は誰も返事をしない。
「今日も休みか〜」
神崎っていう人は私も1度しか会った事がない。
もう完全に顔は忘れている。
でも、この学校は欠席しても留年にはなりにくいので正直別に来なくても大丈夫。
担任が出席を取り終えるとさっそく1時間目の授業が始まった。
私の大っ嫌いな数学だった。
数学は足し算、引き算ができれば良いと思っていた。
これを将来何に使うのか、よく分からない。
私は先生の話を聞いているフリをして男性の事を思い出した。
本当に家に置いてきて大丈夫なのだろうか。
でも元気になれば自分から家を出て行くだろう。
そう思った。
1時間目の授業が終わりクラスの1人の女の子の話し声が私の耳に聞こえた。
聞くつもりはなかったが、そんなに大きな声で話せたら聞いてしまう。
「不登校の神崎って人」
「 隣町でも有名な不良らしいよ」
クラスがざわつき始める。
「喧嘩が強いでこの町でトップだとか」
トップとか喧嘩とか私にはよく分からない。
あんな痛い思いして何が楽しいのか....
それなら数学受けていた方がマシだと思う。
まぁ....今日、不良を家に上がらせてしまったんだけど.....
そんなこんなで、今日も1日無事に学校終了した。
放課後になるとオレンジ色の夕焼けが照らしていた。
いつもは佳奈と下校するのだが、今日は男性の事が気になって小走りで家に帰る。
玄関を開ける前に私はゴクリの唾を呑んだ。
ゆっくり音を立てないように玄関を覗いた。
私は黒いスニーカーに視線を向けた。
.....やっぱり、まだいる。
自分の部屋の扉を開けた。
そこには、朝の男性と見違えるほどに回復していた男性がいた。
「おかえり」
おかえりって.....家に帰らないの......
私はドサっとベッドの上にカバンを置いて床に座った。
「帰らなくて大丈夫ですか?」
「めんどくせぇ」
男性はその場で立ちあがろうとした。
私は何故あんなにボロボロだったのか聞きたかった。
「怪我、大丈夫ですか?なんであんなボロボロに?」
「ただの喧嘩」
ただの喧嘩であんなにボロボロになるのか.....
相手が多かったのか、ただこの人が弱いだけなのか、分からなかった。
「相手が7人、さすがにかなわねーよ」
私はその言葉で固まった。
それは無理でしょ、喧嘩なんてした事ない私でも分かる。
1人殴れば横からまた殴られる。
想像しただけでも恐ろしい。
男性は立ち上がって部屋を出ようとして振り返った。
「ありがとな」
男の人からお礼を言われるなんて久しぶりだった。
「送りましょうか?」
男性は少しだけニッとした。
「女に送られるほど、弱くねーよ」
男性はそのまま私に背中を向けて家を出て行った。
私は1人になって少し部屋が広く感じた。
別に好きで家にあげたわけでもないし、仲良くなりたいからあげたわけでもない。
なのに、もう2度と会えないと思うと私の心臓がギュッと縮まった。
追いかけようと思ったが、ただめんどくさい女になるのが嫌だった。
布団に入って眠りにつく時、男性の笑顔がわすれられなかった。
だから、もう少しあの人の事が知りたくなった。
私は翌日も翌々日もあの日と同じ時間で登校した。
さすがにもういないか....
両親もそこそこ稼いでて、お金に困るような事は1つもなかったし、友達にも恵まれていた。
将来の夢は決まっているが、まだまだその夢には辿り着けそうにない。
もちろん現在進行形で挑戦中。
1番青春出来るって時に、彼氏は欲しいけど私には男運がないのか出会った人はいつもくだらないほど性格が悪い。
あぁ......今日もいつもと変わらないなぁ。
通勤ラッシュの時間帯なのに私が通る道だけは車通りが少なく静かな道。
聞こえるのは風が吹き抜けてザワザワと木々が揺れる音だった。
「あぁ......今日もいつもと変わらないなぁ。
なにか刺激が欲し...ぃ」
その時
私の視界に映るものに少しずつ小声になっていった。
2つめの点滅信号に差し掛かろうとしていた時
額には傷だらけで制服は土でボロボロの男性がフラフラ歩いている。
面倒な事に巻き込まれたくないから絶対に無視します。
男性とすれ違ったその瞬間
男性がこちらに向かってフラッと倒れて私の肩に頭を直撃。
「.....は?」
私は男性を支えながらトントンと肩を叩く。
返事もないし反応もない、男性の体重だけが私に乗っかった。
当たり前に私には男性の体重を支える力なんてない。
「え、ちょっと、おも....」
バランスを崩した私の足が後ろにふらついた。
あ....やばッ
ドサッ
あはは....一緒に倒れちゃったよ.....
男性の全体重が私の体の上にのっかって
しばらく身動きとれなかった。
「すみません」
私はそう言って男性の肩を何度も強く叩いた。
その時、男性の体がぴくりと動いて体を少しずつ起こす。
肩を叩いて起こしたものの顔面傷だらけは流石に怖いな.....
「イッてぇ.....」
男性は髪の毛を掻き上げながら掠れた声だった。
私はフイっと顔を逸らす。
私は顔を逸らしたまま視線だけを男性に向けた。
......は?
何この人。
私の体は鉛(なまり)が流しこまれているみたいに固まった。
長いまつ毛にキリッとした目元。
芸能事務所に所属していそうな顔つきだった。
「何、ガンつけてんの」
男性の目が鋭く私に向いて背筋が凍る。
「あ、いや、何も....」
「わりぃな」
男性はそのまま立ち上がったが、フラフラしていて、壁にもたれかかるように歩いて行く。
今すぐにでも再び倒れそうな歩き方だった。
いつもならそのまま私も登校するであろうがこんな傷だらでフラフラしてる人を見逃す訳にはいかない。
「大丈夫ですか?傷だらけで....」
「別に」
掠れた声で紡がれたその言葉が、心臓に鋭く突き刺さったようだった。
私は咄嗟に男性の手を掴んだ。
「ダメです、手当しないと」
自分から男性の腕を肩に回したまま歩いて、玄関の前で立ち止まった。
その瞬間、肩に回していた手がストンと落ちた。
男性は立てずにいたのか玄関の前で腰を下ろす。
私は上から見下ろすように見ていると威嚇されそうだったので、男性の目線を合わせるようにしゃがみこんだ。
「何、お前」
後頭部に男性の手が回ってグッと顔を近づけられる。
「家に男連れ込もうとして、なにしてーの?」
心臓がドクンと跳ねた。
別にやましいことをしたくて連れきたわけじゃない。
なのに
初対面の人になんでドキドキしてんの私......
だけど、軽い女だと思われたくないので、平然を装うようにした。
「ただの手当なので家に入ってください」
「当たり前ですが、適切な距離でお願いします」
男性が口元に手を当てて、意地悪そうに笑った
「何もしねぇよ」
その瞬間だった。
強い風が私の頬を刺して、それと同時にサラッと髪の毛がなびいた。
傷だらけのはずなのに、驚くほど綺麗な笑顔で
普通の男の子に見えた。
ドクン
再び心臓が跳ねた。
この人一体何者なの.....?
男性の笑顔を見つめたまま
一瞬だけ目が離せずにいた。
「その間抜け顔どうにかなんねーの?」
彼は私の頬をむにっと手で掴んだ。
「え?」
間抜け顔?私今間抜け顔だった....?
頬を触れている男性の手が熱くて、私も顔が熱くなる
男性はクスッと笑って手を離す。
「で、家入っていいんか?」
「どうぞ」
男性は私の腕を掴んでゆっくりと立ち上がって、肩に腕を回した。
男性の体重に耐え切れず私もフラフラして壁に手をついて、なんとかそのまま玄関の扉を開けて靴を脱いだ。
男性は玄関に着くとドサっと座り込んで深いため息をついた。
まぁ、あんなにボロボロで家に入ると安心するよなぁ。
私はとりあえず、玄関でお茶を飲ませる事にした。
冷蔵庫を開けてキンキンに冷えたお茶をコップにいれて差し出した。
「飲みますか?」
男性にお茶を渡すとゴクゴクと飲む勢いにびっくりした。
喉乾いてたんだ.....声が掠れてたのもそのせいか。
私の部屋は玄関入ってすぐ左なので、再び腕を首に回して連れて行く。
私の部屋に入ると安心したのか
男性はそのまま横になって動かなかった。
「ちょっと、待っててください」
私はリビングにある救急箱を取りに部屋を出た。
砂がついていた為、綺麗に洗われたペットボトルに水を入れて部屋に戻った。
「砂、取りますね」
私はさっきのペットボトルと救急箱に入っていたガーゼを準備して傷口周りの砂を慎重に落とした。
人の手当なんかした事ないから慣れない手つきだった。
「下手くそかよ」
さっきまでの掠れた声とは違って低く男らしい声だった。
「初めてなんですよ」
私はそのまま砂を落とした。
よく見てみると深い傷口が数箇所あった。
痛そうだったが何か変な菌でも入って感染なんか起こしたら大変だ。
消毒液を傷口に垂らすと男性の体はビクッと動いた。
「いてぇ」
当たり前に痛いだろうけど、男性の事を思うとやめられなかった。
深い傷口にはワセリンガーゼと医療用のテープを貼った。
浅い傷口は絆創膏で十分でしょ。
「終わりましたよ」
反応がなかったので、私は男性の方に視線を向けるとスヤスヤ眠っていた。
さっきまで痛がってたのにもう寝てる......
学校はどうするんだろう。
男性の両親に連絡はしないでいいのかな?
でも、まぁ仕方がない。
何があったかわからないが、大変だったんだろうと言うのはすごくわかる。
私はこのまま寝かせておく事にした。
時計を見上げるとちょうど8時を過ぎ頃だった。
私の両親もそこまで厳しい人ではないから2人にメールだけして学校に行った。
学校に着くと、校門の前では先生たちが挨拶運動をしている。
「おはようございます!」
大きな声で挨拶するのは担任の''安藤''
熱血だなぁ.....
「梨々香おはよう〜」
私を後ろからギュッと手を回してきた。
フワフワするこの匂いは....
''佳奈''だ
高校に入って1番最初にできた友達だった。
入学初日、校章の付け方が分からなかった不器用な私に教えてくれた。
「梨々香、朝から疲れてる?」
佳奈が私の顔を覗き込んだ。
朝イチでこの顔は無敵すぎる顔立ちに女の私でもキュンとくる。
普通は顔は浮腫むし、私は朝から鏡と睨めっこですけど....
私は今日の出来事を佳奈に話しながら教室に入って席についた。
「何それ、めっちゃ恋の予感じゃん!」
佳奈の声は今まで以上に大きく教室全体に響きわたった。
騒がしかった教室が一瞬でシンとなり私たちに視線を向けた。
「佳奈、ちょっと声でかいよ」
佳奈は自分の口元を押さえて、私に小さく声をかけた。
「で、今その人何してるの?」
「とりあえず家に置いてきたけど.....」
佳奈は驚いている表情だった。
無理もない、知らない男を家に連れ込んでおいてくるなんて、びっくりするのは当たり前でしょ。
その瞬間、教室の扉が開いた。
「席につけー出席とるぞー」
さっき校門にいた熱血教師''安藤''
外ではあまり分からなかったけど教室では声が響く。
そんなに大きい声出さなくても聞こえるのに熱血教師はやたらと声がでかい。
先生は名簿を開いて出席を取る。
生徒達の名前を1人ずつ確認した。
「神崎〜」
教室にいた生徒は誰も返事をしない。
「今日も休みか〜」
神崎っていう人は私も1度しか会った事がない。
もう完全に顔は忘れている。
でも、この学校は欠席しても留年にはなりにくいので正直別に来なくても大丈夫。
担任が出席を取り終えるとさっそく1時間目の授業が始まった。
私の大っ嫌いな数学だった。
数学は足し算、引き算ができれば良いと思っていた。
これを将来何に使うのか、よく分からない。
私は先生の話を聞いているフリをして男性の事を思い出した。
本当に家に置いてきて大丈夫なのだろうか。
でも元気になれば自分から家を出て行くだろう。
そう思った。
1時間目の授業が終わりクラスの1人の女の子の話し声が私の耳に聞こえた。
聞くつもりはなかったが、そんなに大きな声で話せたら聞いてしまう。
「不登校の神崎って人」
「 隣町でも有名な不良らしいよ」
クラスがざわつき始める。
「喧嘩が強いでこの町でトップだとか」
トップとか喧嘩とか私にはよく分からない。
あんな痛い思いして何が楽しいのか....
それなら数学受けていた方がマシだと思う。
まぁ....今日、不良を家に上がらせてしまったんだけど.....
そんなこんなで、今日も1日無事に学校終了した。
放課後になるとオレンジ色の夕焼けが照らしていた。
いつもは佳奈と下校するのだが、今日は男性の事が気になって小走りで家に帰る。
玄関を開ける前に私はゴクリの唾を呑んだ。
ゆっくり音を立てないように玄関を覗いた。
私は黒いスニーカーに視線を向けた。
.....やっぱり、まだいる。
自分の部屋の扉を開けた。
そこには、朝の男性と見違えるほどに回復していた男性がいた。
「おかえり」
おかえりって.....家に帰らないの......
私はドサっとベッドの上にカバンを置いて床に座った。
「帰らなくて大丈夫ですか?」
「めんどくせぇ」
男性はその場で立ちあがろうとした。
私は何故あんなにボロボロだったのか聞きたかった。
「怪我、大丈夫ですか?なんであんなボロボロに?」
「ただの喧嘩」
ただの喧嘩であんなにボロボロになるのか.....
相手が多かったのか、ただこの人が弱いだけなのか、分からなかった。
「相手が7人、さすがにかなわねーよ」
私はその言葉で固まった。
それは無理でしょ、喧嘩なんてした事ない私でも分かる。
1人殴れば横からまた殴られる。
想像しただけでも恐ろしい。
男性は立ち上がって部屋を出ようとして振り返った。
「ありがとな」
男の人からお礼を言われるなんて久しぶりだった。
「送りましょうか?」
男性は少しだけニッとした。
「女に送られるほど、弱くねーよ」
男性はそのまま私に背中を向けて家を出て行った。
私は1人になって少し部屋が広く感じた。
別に好きで家にあげたわけでもないし、仲良くなりたいからあげたわけでもない。
なのに、もう2度と会えないと思うと私の心臓がギュッと縮まった。
追いかけようと思ったが、ただめんどくさい女になるのが嫌だった。
布団に入って眠りにつく時、男性の笑顔がわすれられなかった。
だから、もう少しあの人の事が知りたくなった。
私は翌日も翌々日もあの日と同じ時間で登校した。
さすがにもういないか....