神の愛
「そういえばその子、名前なんて言うんすか?」

 交流会が開始してから二時間、交流会もあと一時間でお開きになるというところで、後輩から投げかけられた言葉に会議室は静まり返った。

 俺が発する言葉を誰もが待っている。

「・・・・・・知らない」
「知らない?」

 しかしながら、俺は後輩の言葉に期待通りの言葉は返せない。

 なぜなら、俺の腕の中で変な喃語を発している赤ちゃんの身分を証明するものは何もない。それに俺はこの子との面識なんて一切ないのだから、名前が分かるはずもない。

 キャッキャッと俺の腕の中で楽しそうに元気良く笑う赤ちゃんの危機感のなさに不安が過ぎる。会議室の空気が氷点下になりかけてるこの雰囲気を、まったく察知しない赤ん坊がこの世界にいることに不安を覚える。

「朝起きたら隣にいた見ず知らずの赤ちゃんの名前を普通知ってると思うか」
「思わないっすね」
「付けるだけ付けておけばどうだ」
「そんな雑な理由で名前付けられるか」
「それはそう。伊倉先輩に同意」

 俺の言葉に後輩は苦笑いを浮かべる。先輩は良いことを思いついたかのように俺に詰め寄ってくるが、思いついたアイデアがあまりにも雑すぎるので叩き倒した。

「いってぇ・・・・・・ん? 恵介、ここ、何かあるぞ」

 俺に頭を叩かれて、その場で数秒、蹲る先輩。

 どうせ痛くも痒くもないだろと内心、悪態をついていれば、先輩は赤ちゃんの足首辺りをモミモミとさわり始める。カサカサと紙が擦れるような音が確かに先輩が触っている場所からする。服の中に何かが隠されているみたいだ。

「・・・・・・・・・・・・手紙?」
「手紙、というよりは詩、みたいな?」

 先輩にカサカサと音を鳴らす物体を取ってもらえば、それは二枚の紙だった。服の中に隠されていたらしい。流石に服の中は確認しなかったな。

 紙はA5サイズで二枚とも半分に折られていた。一枚を開けば、そこには手紙のような、詩のようなものが書かれていた。
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