神の愛
恵介さん、と俺のことを呼ぶ人間はほぼいない。
ふるさとですら、俺のことを恵介さん、なんて呼ぶ人間はいなかった。
少なくとも、ふるさとの人間は俺のことを東舞と苗字で呼んでいた。恵介の名を使って呼んでいたのは年の近い子ども達と母さん、父さん達だけだった。
恵
その文字が眼に入る。俺と同じ漢字。幸せに生きることを望まれた漢字。
「やっぱ、先輩の子どもじゃないっすか」
「いや、覚えないからな」
「恵、ちゃん、じゃないな。よく見たらこの子、ムスコあるわ」
俺が息を呑み、ようやく、後輩の言葉に反応できた瞬間、目の端で先輩が赤ちゃんの、恵のベビー服の上から恵の大切な部分を触っている姿が見えた。
遠慮がねぇな、この先輩は!! 普通、躊躇いもなくそこは触らねぇだろ!! せめて俺の許可取ってからにしろや!!
「勝手に触るな!!」
俺が恵を引き寄せて、先輩から離した瞬間にようやく危機を察知した恵は泣き始めた。
なお、泣き止んだのは二十分後だった。本っ当に先輩殺す。マジで殺す。