ふたつの時を、重ねていく【『ふたつの弧が、重なるとき』番外編/不定期更新中】
二月十四日。甘いバレンタインデー。
今年はとびきり美味しいティラミスを作ってくれた、僕の愛しい人は今――。
「……美絵?」
「…………」
「……美絵ちゃん?」
――思い切り、ツーンとしている。
うかがうように覗き込むたび、プイッと顔を逸らされる。
名前の通り、誰もが見惚れる絵画のように美しいのに、時々こうして拗ねた子供のような仕草をする彼女。
そんなところを愛しく思いつつも、僕は機嫌をとろうと必死だった。
実は今日、勤めている中学校で、女子生徒からチョコレートを渡されそうになった。
美絵にはもちろん言わないつもりだったのだが、ふとした拍子に知られてしまい、このように膨れさせてしまうことになった。
大学時代、美絵という恋人がいるにもかかわらず、クラスの子から想いのこもったチョコレートを受け取ってしまったことがある。
綺麗にラッピングされた、水色の箱だった。
翌日、丁重にお断りしたものの、美絵はいまだにその一件を根に持っているようだ。
あれから毎年「今年は、もらってない!?」と聞かれ、「もらってないよ」と笑って返すのがお決まりのパターンなのだが、今日は違った。
帰宅して早々、いつものようにそう答えたものの、僕の目がわずかに泳いでいたらしい。
鋭く問い詰められ、やむを得ず説明する羽目になったのだ。
「大丈夫。受け取ってないし、そういうのじゃないから」
「……ふーん!」
そもそも校則でお菓子を学校に持ってくることは禁止されており、受け取る云々ではなくたしなめる立場にあった。
その子は一年生で、昨年の暑い日、体育の授業で熱中症になりかけたところを病院へ連れて行ったことへの、お礼だと言っていた。
渡されそうになったときは友達も一緒であっさりしていたし、包装も中身の見える透明でラフな袋だった。
だから、さすがに好意ではないとは思うのだけれど。
今年はとびきり美味しいティラミスを作ってくれた、僕の愛しい人は今――。
「……美絵?」
「…………」
「……美絵ちゃん?」
――思い切り、ツーンとしている。
うかがうように覗き込むたび、プイッと顔を逸らされる。
名前の通り、誰もが見惚れる絵画のように美しいのに、時々こうして拗ねた子供のような仕草をする彼女。
そんなところを愛しく思いつつも、僕は機嫌をとろうと必死だった。
実は今日、勤めている中学校で、女子生徒からチョコレートを渡されそうになった。
美絵にはもちろん言わないつもりだったのだが、ふとした拍子に知られてしまい、このように膨れさせてしまうことになった。
大学時代、美絵という恋人がいるにもかかわらず、クラスの子から想いのこもったチョコレートを受け取ってしまったことがある。
綺麗にラッピングされた、水色の箱だった。
翌日、丁重にお断りしたものの、美絵はいまだにその一件を根に持っているようだ。
あれから毎年「今年は、もらってない!?」と聞かれ、「もらってないよ」と笑って返すのがお決まりのパターンなのだが、今日は違った。
帰宅して早々、いつものようにそう答えたものの、僕の目がわずかに泳いでいたらしい。
鋭く問い詰められ、やむを得ず説明する羽目になったのだ。
「大丈夫。受け取ってないし、そういうのじゃないから」
「……ふーん!」
そもそも校則でお菓子を学校に持ってくることは禁止されており、受け取る云々ではなくたしなめる立場にあった。
その子は一年生で、昨年の暑い日、体育の授業で熱中症になりかけたところを病院へ連れて行ったことへの、お礼だと言っていた。
渡されそうになったときは友達も一緒であっさりしていたし、包装も中身の見える透明でラフな袋だった。
だから、さすがに好意ではないとは思うのだけれど。