ふたつの時を、重ねていく【『ふたつの弧が、重なるとき』番外編/不定期更新中】
 ◇

 そして、翌週の週末。
 今日の活動は、私が待ちに待ったサッカー観戦。

 祥太郎くんはバイトでお休みのため、私がいつも通り美絵の隣に座っている。

「ねえ、いずみ……」

 ハーフタイム中、温かいココアの紙コップを両手で包みながら、美絵がモジモジと口を開いた。

「ん? どうしたの?」

「先週の、バスケの帰りのことなんだけどね……」

 美絵は頬をほんのりと赤く染め、ゴニョゴニョと話し始めた。

「帰りの電車、すごく混んでて……何度も人に埋もれそうになっちゃったんだけど。そのとき、祥ちゃんがずっとギュッと包むように守ってくれてて……」

「おー! スパダリじゃん!」

「う、うん。でもね……その腕が、いつもよりやけに力強くて。一人で終始ドキドキしちゃって……」

 照れ隠しのようにココアをすする美絵を見て、私は心の中で天を仰いだ。

(あーー! 絶対それ、あのやきもちの延長戦じゃん!!)

 人前でのマフラーだけでは飽き足らず、満員電車という密着した状態で、他の男から徹底的に彼女をガードしつつ、特大の独占欲を爆発させていたに違いない。

「……美絵のこと、誰にも触らせたくなかったんじゃない?」

「えっ? いやいや! ただ危なかったからだとは思うんだけど……その……カッコよくて……」

 いまだに彼の『余裕のない本音』に気づかない上に、ときめかされている親友を見て、ケラケラと笑い声を上げた。

「もーっ! ごちそうさま! ほんと、愛されてるねえ!」

「……ちょっと、いずみ。声大きい……」

 まだバレていない、祥太郎くんの重ための愛情。
 それに美絵が気づく日は、もう少し先になりそうだ。



―― 終 ――
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