ふたつの時を、重ねていく【『ふたつの弧が、重なるとき』番外編/不定期更新中】
 ◇

 応援していたチームが勝利し、私の頬はまだ興奮で熱を持っていた。

 試合が終わって外に出ると、熱気にあふれていた室内とは対照的に、北風が吹きつける厳しい寒さだった。
 サークルのメンバーたちと解散し、入り口付近で美絵がポニーテールを解く。
 彼女の身支度を待っている祥太郎くんの首元のグレーのケーブル編みマフラーは、美絵が誕生日にプレゼントしたものらしい。

 彼がふと、美絵の両肩を優しく掴み、クルッと後ろを向かせた。
 そして――フワッと、彼女の伸びた髪を後ろから持ち上げて、邪魔にならないようマフラーを巻きやすくしてあげている。

 少し戸惑いながらお礼を言う美絵。
 でも、横から見ていた私には、はっきりとわかってしまった。

(絶対ワザとだ)

 人前ではイチャイチャしない祥太郎くんが、あえてここで美絵の髪に触れている。
 これは、『さっき他の男に触られた件の上書き』であり、周囲への牽制に違いない。

 美絵はいつも『祥ちゃんって、全然やきもちとか焼かなくてー』と唇を尖らせているけれど、私から見たら普通に、いや結構、嫉妬心がある方だと思う。

 当の本人は、巻き終わったマフラーの上にそっと髪を下ろしてもらい、「行こっか」と優しく声をかけられ「うんっ」と微笑んでいる。
 彼の意図には、おそらく気づいていなさそうだ。

(ほんっと、鈍いんだからー!)
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