ふたつの時を、重ねていく【『ふたつの弧が、重なるとき』番外編/不定期更新中】
「えーっ! カッコいいー!!」

 来月の教育実習に備え、髪を切ってきた。
 その足で大学へ向かい美絵と待ち合わせると、彼女は僕を一目見るなり、パアッと顔を輝かせてはしゃいだ。

 まだ続けているアルバイトも、教員採用試験の勉強もあって、毎日忙しい。
 次回のカットがなるべく先になるよう思いきって短めにしたのだが、彼女には好評なようでホッとする。

 それどころか。

「……このまま歩くの?」

「ダメ?」

 キャンパス内だし、知り合いに会うかもしれないというのに、美絵は僕の腕にしっかりと抱きついたままだ。

『祥太郎、この前めっちゃ鼻の下伸ばしてたよなー』

 脳内で正人や男友達の茶化す声が再生される。
 誰に見られているかわからない。せめて顔だけは……と、緩みまくる頬を必死に引き締めた。

 ◇

 約束通り、美絵が僕の家に遊びに来た。

「……うがい、できないな」

「えー?」

 部屋に入ってからというもの、美絵はずっと「カッコいい、カッコいい」と言いながら腰に腕を回し、背中にピッタリとくっついたままだ。

「ほら。十秒だけ離れて、美絵もやって」

 そう言うと、パッと離れた彼女は高速で手洗いとうがいを済ませる。
 そして振り返ったところを――僕がひょいっと持ち上げた。

「わっ!」

 嬉しそうに驚く笑い声が頭上から降り注ぐ。

 そのままベッドの上にそっと下ろして、覆い被さった。

 このあと始まる甘い時間の手前で、文字通りじゃれ合う。
 照れながらも、僕に触れられるのを待っているその瞳がたまらない。
 つい意地悪をしたくなって、焦らすように時間を引き延ばしてしまう。

 そんな僕を急かすように、美絵のほうからキスをしてきた。
 観念してそれに応える。

 時々フッと笑い合いながら、二人で上下の位置を入れ替えたりして、もう僕の理性が終わりを迎えそうになった――その瞬間。


 ――ピーンポーン。


「祥太郎ー!? 開けてー!」
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