ふたつの時を、重ねていく【『ふたつの弧が、重なるとき』番外編/不定期更新中】
(…………!)

 僕たちは「ずっと一緒にいたい」と話してはいるものの、その具体的なワードは、まだ一度も口にしていなかった。

 ――『結婚』。

 この春、大学四年生になった。
 進路も、だんだん決まりつつある。
 そろそろ意を決して、僕の気持ちを伝えたいと、考えていたところだった。


「……美絵」

「……ん?」

 彼女の瞳をまっすぐ見つめる。

「ゴールデンウィークに、福島で会おうって話してたけど。一緒に、中学校……行かない?」

 僕は連休明けから、母校で教育実習をする予定になっている。

 美絵に伝えたい、大切な言葉。
 どこで言おうかと、ずっと考えていたが――やっぱり、美絵と出会ったあの場所にしたい。

「えっ? 私も入れるの?」

「卒業生は、休日なら入れるんだって」

「……うん! 私、卒業してから行ったことないんだ。祥ちゃんと行けるなんて嬉しい!」

 目を細める美絵。
 僕の提案の意図にはまだ気づかず、純粋に楽しみにしてくれているようだ。

 そんな彼女に、優しいキスをひとつ落とした。

(お願い。そのときも、その笑顔で頷いて――)



―― 終 ――
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