ふたつの時を、重ねていく【『ふたつの弧が、重なるとき』番外編/不定期更新中】
「瀬川がどうかしたの?」

 ぐるぐる考えていたことがバレたように思えて、慌てて「なんでもない!」と首を振った。

 バスがゆっくりと発車した。
 揺れに耐えようと身体に力を入れた瞬間、ピキッと腰に痛みが走った。

「……っ」

「あっ。美絵、大丈夫?」

 私の具合を知っているさやかが、心配して覗き込んでくる。

「ありがとう。ちょっと痛むけど、まあ平気! 病院にも通ってるんだけど、なかなか良くならなくて……」

 私は、陸上部で走り高跳びに打ち込んでいる。
 去年の秋の新人戦、少し無理をして頑張りすぎてしまった。
 目標にしていた結果は出せたものの、それ以来、時々こうして腰が痛むようになってしまったのだ。

「美絵、頑張り屋さんだからねえ」

 そう言ったさやかは、男子と話すのが苦手な私に代わって、真後ろに「ちょっとシート倒していい?」と確認してくれた。
 了承してくれた相手にペコっとお辞儀をし、有り難くシートを倒して、腰を休ませてもらう。

 窓の外を見ると、駐車場で、もう一台の大型バスがすぐ隣に並んだ。

 ガラス越しに同級生たちが見える。
 何人か知っている顔があって、それが二組のバスだと気づいた。

(……五組、じゃなかった)


 やがて動き出した窓の外の景色を眺めながら、心の中で、東京の街にお別れを告げた。

(次、この街に来るのは、いつになるかな?)

 その先の未来で、まさかこの空の下で『彼』と再会するなんて。
 想像すらしていない、十五歳の私だった。




―― 終 ――

読んでいただき、ありがとうございます!
また次の更新をお待ちくださいませm(._.)m
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