ふたつの時を、重ねていく【『ふたつの弧が、重なるとき』番外編/不定期更新中】
 ◇

 大型バスに乗り込む。
 私たちはこれから上野駅に向かい、そこから新幹線に乗って地元の福島へと帰る。

「可愛いの、買えたねー!」

 去年から同じクラスで仲のいいさやかが、さっき買ったばかりのキーホルダーを小さな紙袋から取り出した。
 いよいよ高校受験を迎えるということで、お揃いでピンク色の『学業御守』にしてみた。
 さっそくリュックに付けてみる。
 小さな鈴が付いていて、揺れるとチリンと軽やかないい音がした。

 ブルル、と足元でエンジンがかかる振動を感じる。

 ふと――気になっていたことを口にした。

「……ねえ、さやかってさ。さっきの人と……仲、いいの?」

 さやかは緑茶のペットボトルのキャップを開けながら、「さっきの人って?」と聞き返す。

「えっと……野球部の、ピッチャーの……」

「ああ! 瀬川?」

 その名前を聞いて、なんとなく視線を逸らしながら「うん」と頷いた。

「小学校のとき、何回か同じクラスになったんだよね。あと、親同士が知り合いでさ」

 一口飲んだペットボトルをリュックに戻しながら、さやかはあっさりと答える。

「この前、県外の野球強豪校からスカウトが来てたらしいよ。やっぱり、他県の高校行くのかねー?」

「……えっ。そうなんだ」

 遠くに、行っちゃうんだ。

 すごいなあ。
 将来は、甲子園とかに出られたりするんだろうか。
 そうしたら、テレビで応援できるかな。

 福島に帰ったら、野球部はすぐに春季大会があるらしい。
 うちの中学校はそこそこ強くて、今年はいいところまで進みそうだと期待されている。
 お父さんが大会を観に行く予定で、「美絵も行こう」と誘われたけれど。
 自分の部活と被ってしまって、無理そうだ。

 彼も、投げるのかな。
 普段からすごいけれど、試合のマウンドに立つ彼は、もっとすごいのかな。

 ……観たかったな。
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